2020年03月30日

GHOST 第8話

「なぜ死んでしまったの?」

あの事故から1週間が過ぎていた。

有子はこの1週間はとても忙しくしていて

親族たちを上手くあしらいながら

通夜をこなし葬儀をこなし

書類の整理などで

てんやわんやの日々を過ごしていた。

ようやく落ち着いた1週間後の今朝になって

かなり気を張っていたのが現れてしまい

出棺が終わった時点で一気に気持ちがほころぶとともに

まるで緊張の糸がプツンと切れて

腰が砕けてベッドから起きられない状態にまでなっていた。

今日一日は這うようにして部屋中を移動して

気を紛らせるため朝から夕方になるまでソファに座りずっと酒を飲んでいる。

このままにしておけば酒浸りの日々が続くことになる。

GHOST「あまり飲むと体に毒だぞ。」

まったく聞こえていない。俺の声が聞こえるはずもない。

俺達は住む世界が違うのだから。

この1週間でわかったことがある。

俺の声は生きている人間には届かなくて

どうやら俺の魂は成仏せず、この現世において

彷徨いながら浮遊しているらしい。

もちろん俺の姿も生きている人間には映らないし、

俺が触ろうとするものも全て空気みたいに俺からすり抜けていく。

魂だけがフワフワと意識を持った状態で彷徨い続けているのだ。

「おとうちゃ、どこ?」

「おとうちゃんはね。今ここには居ないのよ。」

「どこ?」

「あなたの知らない世界に行ってしまったの。」

「とちょかん いきたいな。」

「承・・・」

GHOST「承・・・ごめんな。」

その言葉を耳にするなり

有子も俺もともに住む世界は違えども

声をあげ長い時間泣き続けるしかなかった。

つづく

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2020年03月27日

GHOST 第7話

 

 

 

 

 

 

   GHOST 第7話

 

 

 

 

 

 

 

 

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2020年03月25日

GHOST 第6話

 

「これ・・・よんで。」

図書館に入るとまずまっ先に読ませられる絵本がある。

題名 2ひきのかえる。にいみ なんきち作

随分と気に入っている絵本の一つで

置いてある場所も承は知っていて

児童図書コーナーに入ると

我先にと走っていっては、その絵本を毎回持ってくるのである。

「みどりのかえると きいろのかえるが

はたけのまんなかでばったりゆきあいました。

やあ。きみはきいろだね。きたないいろだ。

と みどりのかえるがいいました。

きみは みどりだね。

きみはじぶんをうつくしいと

おもっているのかね。

と きいろのかえるがいいました。

こんなふうに はなしあっていると

よいことは おこりません。

2ひきのかえるは とうとう

けんかをはじめました。

みどりのかえるは きいろのかえるのうえに

とびかかっていきました。

このかえるは とびかかるのが とくいでありました。

きいろのかえるは あとあしで すなを けとばしましたので

あいては たびたび めだまから

すなを はらわねばなりませんでした。

するとそのとき さむいかぜが ふいてきました。

2ひきのかえるは もうすぐ ふゆのやってくることを

おもいだしました。

かえるたちは つちのなかにもぐって

さむいふゆを こさねばならないのです・・・」

読んでいる最中、承の顔を見てみる。

目を閉じてジッと俺の朗読に耳を傾けている。

不思議なほど静かなので眠っているのかと思うのだが

たとえ夢の中であってもこの朗読の言葉一つ一つが

届いてさえくれればいいと思い俺は最後まで読みきるのである。

10分ほどで絵本を読み終えてしまうところを

ゆっくりと読むのでその倍の20分はかかってしまう。

「そこで2ひきのかえるは

もうけんかは よそうと いいあいました。 おわり。」

読み終わると本棚へ行き

手当たり次第に次の本、次の本と

持って来て「読んで。」と、せがむのだった。

つづく

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2020年03月23日

GHOST 第5話

 

「承、電車が来る。危ないぞ。」

たとえカンカンカンと

けたたましい音が周りを支配していても

遮断機が下りない踏切だと注意力が緩んでしまう。

ちゃんと見張ってないと子供はいきなり飛び出すという危険性がない訳ではない。

油断はできない。

電車が通り過ぎるまで踏み切り手前で待つことに。

線路の周りでは草花が生い茂る湿地帯となっており

花菖蒲などの鮮やかな紫色が周りに色どりを添えて

気持ちを和ませてくれる。

電車を待つ間、

この小さな湿地帯は季節の移ろいを真っ先に伝えてくれる場所でもあるのだ。

電車が通り過ぎ、さらに線路を超えると時間にして15分間、

田んぼと田んぼの間の道を通り抜け

しばらく行くと民家が密集した所に出る。

そこをただひたすら真っ直ぐ行った所に

我々が目指す目的地の図書館に辿り着くのであった。

つづく

 

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2020年03月22日

GHOST 第4話

 

我々が住んでいる4階の建物の隣には

美容室がある。

いつも背の高い茶髪の寺沢という名の若い男が

仕事の合間を見つけては外に出て花壇に水をやっていたりする。

今日も我々が横を通り過ぎようとした時も

曇り空なのに律儀にも花壇へ向けて水をあげている最中だった。

彼はこの美容室のオーナーである。

メイン道路から外れて細道を行った先にこの美容室は存在する。

立地条件はそれほど良くないのだが

それでもこの辺のちまたでは結構有名な美容室で

従業員を何名も従えていて

とても繁盛している美容室なのである。

我々が図書館へ行くには、十数軒もの家を迂回して大通りに出ないと行くことが出来ない。

美容室の前にある民家との間に道が存在せず

民家がかなり美容室よりにせせり出ているがために

十数軒の家々を我々は回って迂回しなくてはいけなかった。

でも美容室の庭を横切ることによりその問題は解消され

随分ショートカットすることができ時間短縮になるのだった。

最初の頃は遠回りして図書館へと行っていたのだが、

それを見かねた寺沢の方から

「うちの庭をどうぞ。

遠慮は要りませんから通ってください」

との提案があった訳である。

結局はその言葉に甘えさせてもらって

いつも週末になると美容室の庭を通り図書館へと通わせてもらっていた。

そんな寺沢も我々と話せるということが嬉しかったようで

美容室の庭を我々が通るたび、いつも話しかけてくるのだった。

今日のような雨になりそうな日であっても

もうすぐ雨で濡れる為、草花に水やりなんか無駄だと普通なら思うのだが

でも寺沢はそんなこと一向に考えず

惜しみなく色んなものに寺沢は手間暇かけて愛情を注ぐのである。

そのへんの細やかな心配りが美容室を繁盛させてる所以なのであろう。

「図書館ですか。」

こちらの週末の行動パターンをよく知っている。

「そうです。いつもこれをささやかながら楽しみにしているんでね。」

「いいですね。親子仲良くて。」

屈託のない笑顔が我々親子に対する好意の表れであり

我々とあいさつをすることが

いつもとても楽しみにしているといった感情を与えてくれる。

同じように寺沢のそういった行為によって我々もさらに元気をもらえているようなものだった。

俺に向け軽くあいさつしてくれると

「承くん、どこ行くの?」とあえて知らないふりをして息子に尋ねて

コミュニケーションをはかろうとする。

さすが社交的な素振りが板についていてサービス業の鏡のような存在である。

「おとうちゃと・・・ぼくと・・・とちょかん・・・今から・・・ゆく。」

承もその行為に真剣になって受け応える。

「そうか図書館行くのか。いいな。おじさんも承くんと一緒に行きたくなってきたな。」

我が子同然のように親しくして可愛がってくれているのがその場の雰囲気を和ませてくれる。

寺沢に、しばしの別れを告げ、さらに美容室の庭を通り抜け突き進むと

小規模ではあるが草花が群生している場所があり

ちょうどその真ん中を突き抜ける形で道が存在していて

それをさらに進むと

遮断機のない人一人が通れるような踏切に突き当たるのである。

そこを通り抜けないと目的地である図書館には辿りつけないことになっている。

カンカンカン。

今まさに電車が来ようとしていて、

けたたましい音を周囲に向け響かせているのだった。

つづく

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