2021年02月05日

ボンベレスダイブ95

 

「友達?」

 

「そうです。僕たちと、同じ施設で育ってきた友達に会いに行くんです。」

 

「その友達は何で愛知県にいるんだ?」

 

「僕たちと同じように施設を抜け出して、愛知県の日間賀島って所にいるんです。」

 

「なら何もそんなに焦って会いにいかなくてもいいじゃないか。

 

どうせほとぼりが冷めたら、その友達は、またつまんなくなって施設に戻ってくるんじゃないのか?」

 

「ダメなんです。僕たちが、会いにいってやらないと。」

 

「おい、どうした?植村?」

 

いきなりトラックの後ろから人が歩いてきて、運転手に話しかける。

 

「何だ。お前ら、邪魔してんじゃねえ。とっとと、そこをどくんだ。」

 

トラックの前に邪魔をして立っている和樹の存在に気づいた途端、

 

まるで野良犬を追い払うかのように手をしならせて邪慳にその男は追い払おうとしていた。

 

その時、和樹が大声で叫んだ。

 

「彼女は、とても弱くて、いつも自分の生い立ちを恨んでは、嫌なことがあったりすると、リストカットして気持ちを表していました。

 

この前も、生きるということに嫌気がさしてリストカットしたんです。

 

挙句の果てに施設を抜け出し、今、愛知県に行っているんです。

 

このまま僕たちが行ってやらないと、彼女は自殺するかもしれません。

 

自殺をくい止めるために、僕たちが行って防いでやらないと。」

 

和樹はひたすらトラックの前で運転手の男に向かって、必死に話しかけた。

 

「駄目だ。駄目だ。そんなこと言っても。早くそこをどくんだよ。坊主。」

 

歩いてきた男に、いとも簡単に僕たち二人は、両脇に抱えられ持ち上げられていた。

 

その直後、トラックは唸り声をあげ、ものすごいエンジン音をふかし去っていく。

 

「離せぇ~離せぇ~」

 

僕たちは、手足をバタつかせて必死に抵抗を試みたが、男の力には、到底かなうはずもなく、その力に従うしかなかった。

 

第二関門突破ならず。

 

粋がっていた僕たちの運命もここまでだったかと思うと次第に力が失われていくのがわかった。

 

僕たちは、守衛のいるところまで運びこまれた。

 

「おい、駄目じゃないか。しっかりみてないと。こそ泥が侵入してたぞ。」

 

男は、僕たちを下へ降ろすなり守衛の男に向かって激しく叱責していた。

 

「あれ?何だお前ら。どうしてここに入りやがった?」

 

男はとてもびっくりした様子を隠す事が出来ないというふうで僕たちに向け言い寄った。

 

「こんなことが、二度とないようにな。」

 

「はい。どうも、すみません。以後、気をつけます。」

 

守衛の男は、大変申し訳なかったというふうに、かついで来た男にペコリと頭を下げているのだった。

 

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2021年02月02日

ボンベレスダイブ94

 

「聞こえないのか?早くどけ。そこの坊主。」

 

プゥォーーン

 

まるで汽笛が鳴ったかと思う程の耳をつんざく高くて乾いた警音が、僕たちを襲った。

 

「和樹。いいか。何があっても、ここを動くな。」

 

「あいよ。」

 

そう言うと僕は、和樹をトラックの前に残し、運転席へと回る。

 

「おい。このトラックが見えないのか?いい加減にしないと、ひき殺すぞ。」

 

「殺せるならどうぞ。」

 

僕は、運転手に向かって冷静を装いながら言った。

 

「何ぃ?なんだ?おまえ。頭がおかしいのか?」

 

「お願いがあります。」

 

「はあ?」

 

「だから、お願いがあるんです。」

 

「トイレなら、あっちだ。あっち行け。邪魔だ。」

 

運転手は事務所に向かい指をさしていた。

 

「そんなんじゃない。」

 

「どけ。」「嫌です。」

 

「めんどくせえガキだな。」

 

「僕たちを、愛知県に連れて行ってほしいだけなんです。」

 

「はあ?やっぱり頭おかしいな。お前。」

 

「おかしくありません。」

 

「駄目だ。駄目だ。他を当たれ。」

 

運転手は、手刀を切って絶対、僕たちの要求には応じられないといった構えである。

 

「お願いします。」

 

「あいにく、馬鹿と付き合っていられるほど、俺は時間がねえんだよ。さあそこをどいた。どいた。」

 

「どきません。絶対。愛知県に乗せていってくれるまでは。」

 

「そんなの、電車なり、車なり使って行けばいいじゃないか?」

 

「お金が二万円しかないんです。」

 

「そんなこと、俺の知ったことか。お前の父ちゃんやら、母ちゃんに貰えばいいことだろうが。何で俺が面倒みなくちゃいけねえんだ。」

 

「僕たちには、父ちゃん、母ちゃんがいません。今朝、施設から抜け出してきたんです。」

 

苦し紛れに出た嘘だった。それを聞いた運転手の顔色が少し変わった。このチャンス、逃したら、僕たちの計画は全て無駄になってしまう。

 

「お願いします。愛知県にいる友達に会いにいきたいんです。」

 

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2021年01月30日

ボンベレスダイブ93

トラックの一台一台、いろんな地域のナンバープレートが存在した。

 

さらに奥に進んでいった先に事務所が存在し、隣接した駐車スペースには何台もの乗用車が所狭しと並んでいた。

 

次から次へトラックが到着したかと思うと運転手たちは、事務所に向かって歩いていき、

 

中に入ったかと思うと、しばらくして自分の持ち場である荷物置き場にトラックを縦列駐車させ、

 

順序よく手際よく山のように積んである荷物を荷台に積み込んでいた。

 

今まさに出ていかんとする運転手のハンドルさばきも確かに普段の慣れによって培った技術が生かされていて

 

運転するというよりかは、ハンドルを転がすといった表現が的確に当てはまるのだった。

 

僕たちは、轢かれそうになりながらも、必死になって目的とするトラックを探した。

 

「兄ちゃん、あれだ。」

 

和樹が、指をさした先には、今まさに出発を目前にした三河ナンバーのトラックがあった。

 

よくみると、その辺一角には、三河ナンバーゾーンが設けられていて、

 

愛知県へ出発することが推測されたが、止まっている他のトラックには、運転手の影もなく、いつ来るかもわからない状態だったこともあり、

 

このタイミングを逃したら、計画は全て水の泡になる恐れがあると思い僕たちはこの目の前のトラックに狙いをつけることにしたのだった。

 

運転手は、運行計画のようなものを見ていたかと思うと、隣りのダッシュボードの上に軽く放り投げ、

 

すばやくサイドブレーキを下ろした後、次の瞬間にはハンドルを大きく右に旋回していた。

 

出発である。

 

荒れ狂うような、エンジン音がマフラーからすさまじい響きとともに黒煙を発しながら、動き出していた。

 

「止まれ~止まれ~」

 

僕たちは、それを見るや大声を出しながら両手を広げ、そのトラックの前に向かい突進していった。

 

キイィィーーン

 

「気をつけろ。死にたいのか。このガキゃあぁーー!」

 

トラックは唸り声をあげて止まったかと思うと続けざま、中から運転手が顔を出し、怒り狂った罵声が矢のように飛んできた。

 

まさかこんなところに子供がいるなんて予測もつかなかったに違いない。

 

「すみませんっ。」

 

瞬時に謝った僕だったが、そのものすごい罵声に、縮み上がりそうになった。

 

トラックと僕たちとの距離はわずかに三十cm。

 

間一髪である。

 

一歩間違えたら、ここで僕たちは仏になっていた所だ。

 

「どけ。」

 

運転手が再度、怒鳴った。

 

ここでひるんではいけない。

 

交渉しないことには。せっかく早く起きてここまで色々やってきた意味がなくなってしまう。

 

 

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2021年01月27日

ボンベレスダイブ92

「どうだかな。それは、これからのなり行き一つだ。」

 

早朝だというのに、工場には活気があふれ、人の声が飛び交っていた。

 

僕たちが、到着した時には、もうすでに、いくつかのトラックが国道へと排出されていたのである。

 

「ここから、どうする?」入口付近を詮索するように注意深く見てみる。

 

「まず、あの守衛の目をくらまして工場内に侵入することが、第一関門だな。」

 

見ると、入り口の前に限られた箱型をした小さなスペースに一人の男が、椅子に座り

 

工場に出入りするトラックを監視しているのがわかる。

 

まるで番犬そのものだ。

 

僕たちは、しばらくの間、その場にたたずみ、うまくくぐりぬける方法を考えていた。

 

中から出てくる者。入っていく者。様々で、唯一共通していることは、

 

入り口にトラックを止めて、守衛がいるカウンターに置かれてあるノートに皆一様に記帳するのがどうもここの規定みたいだ。

 

「よし。これだ。」

 

僕がひらめいた方法は、次、中に入るトラックがあれば、しかも極力ロングボディーのものに限る。

 

もしそういったトラックが次入っていったら、トラックの影に隠れつつ、中に入るという計画をたてたのである。

 

それから五分くらい経った頃だろうか?

 

一台の超ロングボディーのトラックが入っていこうとして、

 

入り口にトラックを止め運転手はノートの所へと記帳しに向かったのである。

 

「今だ。」

 

その時を、僕たちは見逃さなかった。

 

すかさず守衛から死角になるトラックの陰に立ち僕たちは身を隠したのだった。

 

その後、三分くらいして運転手は、記帳を終えると運転席に戻り、

 

バタンッと大きな音で運転席のドアを閉め、ゆっくりとトラックを発進し始めようとしていた。

 

この絶妙なタイミングを逃すものか。

 

次の瞬間、僕たちは、守衛から陰になった事を承知のうえで思い切り工場に向かい走っていた。

 

選んだトラックが超ロングボディーだった事により、僕たちは楽に工場の敷地内に侵入することが出来たのだった。

 

やったぁ~。第一関門突破。

 

「さあ、次は三河ナンバーだ。」

 

僕たちは、駄々広い駐車場に潜入して、縦列駐車しているトラックのナンバープレートを注意深く見て回った。

 

まず最初に驚いたのはその工場と駐車場の大きさだった。

 

中でも、その駐車されているトラックの多さに度肝を抜かされた。

 

ゆうに五十台は下らないそのトラックの数に僕たちは、ぶったまげた。

 

普段は、工場の外からではあるが、大きいというイメージは認識していたが、

 

まさかここまでスケールがデカイとは思ってもいなかったことであり、

 

それはこれから僕たちがお願いするであろう申し出に快く承諾してくれるだろうという期待感を増幅するものであった。

 

千葉、茨城、大阪・・・

 

 

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2021年01月24日

ボンベレスダイブ91

 

「大丈夫か。そんなことやって。税関に見つかりはしねえか?」

 

「手足を縛って車のトランクに放り込んでおけば大丈夫だ。

 

見つかりっこねえ。どうだ。いいアイデアだろ。

 

それには窒息死しちまうと良くねえから空気孔を開けるようにだな向こうのバイヤーに言っておいて・・・」

 

得意満面な表情で言っているのが目に浮かぶ。

 

僕たちが手を洗っている手洗い場から壁一枚はさむ形で男2人は話していた。

 

僕たちは、それを聞いて驚きのあまり背筋が凍り付きそうだった。

 

膝はガクガクと震えて止まらなくなっている。

 

「和樹。」

 

僕は小さな声で言う。

 

和樹も僕と目を合わせ何も言わずにただ黙って頷く。

 

固唾を飲みこむと喉がゴボリと唸るように鳴った。

 

腰が抜けそうで歩くだけでも大変だったがフラフラしながらもなんとかバランスを整えることだけに集中して

 

僕たちは、この場から必死になって逃げることを考えた。

 

捕まると海外に売り飛ばされてしまう。

 

そうなると今回のことで父ちゃん母ちゃんとは今生の別れになってしまう。

 

絶対嫌だ。

 

ましてや和樹とは別々の国へそれぞれ別れて売り飛ばされ離ればなれになるかもしれない。

 

なんてことを考えると何が何でもこの場から逃げたかった。

 

失敗に終わってしまった。

 

まだ全然、愛知県に向けて進んではいない。

 

ここは僕たちの住んでいる所から目と鼻の先の地点である。

 

でも、もしこのまま人身売買されて、どこかの国へ売り飛ばされてたということを考えたら・・・

 

失敗でよかったんだとも思える。

 

「どうする?兄ちゃん。また元に戻ちゃったけど。」

 

和樹が力なく言う。

 

そんな時だった。突然、頭上に降るように僕は、ある名案が思いついたのだった。

 

「和樹、ちょっと、俺について来い。」

 

「どこ行くの?」

 

僕は和樹を誘導する。

 

「いいから、ついて来い。」

 

僕たちは国道から北西方向に向かい歩いていく。

 

もうすでに東の空が、明るくなっている。僕たちは、急いだ。

 

五百mも歩くと、違う国道が交差して現れた。

 

この国道は、今まで歩いてきた国道よりもトラックの往来が激しく、

 

高速道路などに通ずるジョイントの役目を果たしていた。

 

それを北へと少し歩いたところに目的とするものはあった。

 

「ああ、これは。」

 

そうである。そこは僕が、以前父ちゃんと歩いていた時に、愛知県に向かうトラックを見つけた工場である。

 

「兄ちゃん、頭いい。」

 

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南安城整骨院・接骨院のおもしろい院長ブログ

安城市にございます南安城整骨院では、院長がブログを配信中です。院内の出来事や治療の事、お体の事、あるいは日常のちょっとした出来事などを綴っておりますが、ご覧いただいている常連の患者様などからは、文学調で面白いとか、エッセイを読んでいるようだとの感想を頂戴しております。
単に痛みの話や交通事故治療の話を語り、南安城整骨院・接骨院にいらしてくださいというのではなく、どこか小説を読んでいるような面白さでございます。是非一度、ご覧いただき、院長の成りや人柄、考え方に触れていただければ幸いです。
整骨院・接骨院での治療は直接お体に触れ、患部の症状を和らげていきます。そのため、やはり施術する人がどんな人であるのかは、患者様の関心事でございます。ブログを見て、この人なら任せられると思った方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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