2021年02月17日

ボンベレスダイブ99

 

助手席で凝り固まって身動きも満足に取れずこの死んだように硬直した体をようやく自由にできることがなによりも嬉しいことであったため僕は運転手の質問に対してどもりながらの一つ返事で答えていた。

高速道路のパーキングエリアに寄ること。それは今、僕たちに用意されたオアシスのようなものでありいっときの安堵感を与えてくれる楽園のようなものに匹敵する。

しばらくの間、休憩できる。そう僕達は思っていた。

そうこうしているうちにトラックは、パーキングエリアに入っていく。

「じゃあ、五分な。」

植村が吐き捨てるように僕たちに冷たく言う。

「えっ?」

耳を疑ったが、とにかく僕達は無理を言ってトラックに載せてもらっている身。ここは大人しく従わざるを得ない。数え上げればパーキングでのしたいことは山ほどあるのだが、そこをグッと我慢してトイレをすませた五分後、飼いならされたペットのようにちゃんと時間にシビアに行動しトラックに着席を強要させられることに僕たちは落胆の色を隠せなかった。

本当に面白い程ストップウォッチで計らされたような五分間の休憩だった。あと他には、一切のものが切り捨てられ自由なんてものは素通りさせられた。

時間を計ったように、五分後にはトラックが自動運転でもセットされたかのように動き出していく。1秒でも遅れたらこの植村という運転手は僕達をその場に置いていくに違いない。この男。徹底したかなりの堅物である。

「おい、今のでいくつジャンクション通り過ぎたんだ?」

「兄ちゃん、まだ1つ目だよ。」

「迷っちまうな。」

とにかく、網の目のように張り巡らされた首都高はジャンクションに差し掛かるたびに、縦横無尽に方向を変える。迷路そのものだった。そんな時である。

「殺す。」「えっ?」一瞬、僕は言葉を失う。「さっきから聞いてれば言葉を覚えたての子供みたいによくしゃべりやがって。お前ら、ちょっとうるせえんだ。二度と口もきけねえようにしてやるから覚悟しろ。」堪らずに植村が口走ったのだ。「えっ?」聞き間違いであることを祈る。

「今から、お前達を殺してやるからな。そう俺は言ったんだ。この俺の手で。覚悟しろ。だから大人しくするんだ。」

そう言った後、植村の高笑いが車内で時間にして1分間、続くこととなる。「ええっ?」

僕たちは和樹と口々に聞き返していた。僕たちは顔を強張らせる。

「残念だったな。このトラックに乗ってしまったことを呪え。せいぜい死ぬまでの間、ここで充分楽しむがいい。冥土のみやげになるってもんだ」

 

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2021年02月17日

ボンベレスダイブ98

トラックの助手席に座ること自体、僕たちは初めての経験だった。

車内が意外と広いことには驚かされた。

椅子は、リクライニングシートになっていて、百八十度倒すことが出来る。

また椅子の背後にはカーテンがしかれてあって奥にはスペースがあり、あえてそこで寝ることも可能だった。

ジュースホルダーには、飲みかけの缶ビール。ん?まあいい。ここだけの話ってことで、これは見なかったことにする。

植村は、さっきの言葉を最後に、ずっと黙ったままである。

座席に座っていて、気まずい雰囲気なのは言うに及ばない。

うまく計画どおりに事が運んで嬉しいとは思う。

でも本当にこのトラックでよかったのか?という疑問さえ湧いてくる。

まあ、仕方ない。乗りかかった船だ。じゃなくて、トラックだ。

トラックは東北自動車道、佐野藤岡インターチェンジから乗り、東京へ向け進路をとった。

今度はちゃんとした方向へ向け無事に進んでいるようだ。植村の真面目そうな顔が人身売買に一切関係なさそうな感じがしてホッと一安心する。もう2度と同じ目には遭いたくないからだ。

トラックの快適な揺らぎ、朝早く起きたことによる疲れのせいで五分もしないうちに僕たちは、眠りの境地へと入っていった。時間にして、ちょうど一時間、僕たちはトラックの助手席で眠りながら身動き取れない姿勢が続いた。

やがてトラックは東京の首都高に合流、そこを尚もお互い無口なままシンと静まり返ったトラックが一台、走り抜けていた。植村は、缶ビールを飲み終え、それを灰皿がわりに、ぷかぷかとタバコをふかしている。単調ななりにも色んなことをして、あれやこれや忙しそうにしている。さらにトラックは四、五十分走っただろうか?

そこでようやく渋滞に巻き込まれてしまう。そしてジャンクションにさしかかったか?と思うと分岐するあたりで右へ左へトラックは進路をとっていた。その度に僕たちの体は、同じように右へ左へと揺れていた。

それまでは気持ちよく寝ていた僕達であったが、さすがにこんな左右への振り回される状況があると眠れるわけにはいかない。目に見えない植村に対する緊張もあり腰も膝も、直角位のまま凝り固まっていた。最初、快適だと思われた助手席は、これじゃあ生き地獄である。

「坊主たち。トイレはどうだ?」

「えっ?」

植村の突然の言葉に集中を欠いていた。

「トイレに行きたいか?と聞いているんだ。小便したいなら、パーキングによるぞ。」

「お、おねがいします。」

 

 

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2021年02月10日

ボンベレスダイブ97

 

「本当に、いいんですか?」

 

僕は、トラックに近づき、男に話しかけていた。

 

「乗れ。」

 

「お金が、本当にないですよ・・・」

 

「そんなの要らん。とっとと、助手席に乗れ。」

 

「お金なくても、いいですか?」

 

僕は、改めて念を押す。

 

「くどい。お前は本当に行きたいのか?それとも行きたくないのか?どっちなんだ。」

 

「行きたいです。」

 

「だったら、乗れ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

あくまでも虎視眈々とした男のぶっきらぼうなその態度に僕はあっけにとられる。

 

さっきの2人組みの男たちより言葉は乱暴だが、話してみた感じこの男は裏がなさそうだ。

 

トラックの運ちゃんというものは、気性が荒く、短気だと聞いてはいたが、まさかここまで威圧されるとは予想だにしていなかった。

 

僕たちは、そのトラックの助手席にすばやく乗り込んだ。

 

プゥォーーン

 

「俺の名前は植村ってんだ。」

 

そう言うとクラクションと共に、トラックは爆音発車していた。

 

 

 

 

(少し離れた空き地)

 

コンビニから離れたわき道からシルバーの車が朝日の光を浴びてキラキラ輝いている。

 

車内でそれを一部始終遠くで見ていた一人の男。

 

男は、おもむろに携帯電話を取り出し、電話を掛けていた。

 

「ああ、俺だ。ガキ達は、ようやくトラックに乗りこみやがった。やっぱり睨んだとおりあの会社のトラックだったよ。後から俺もそちらに向かうからな。いいか。しくじるんじゃねえぞ。しっかりやれよ。」

 

男はそう言うと電話を一方的に切っていた。

 

 

 

 

 

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2021年02月10日

ボンベレスダイブ96

男は、そのまま踵を返し帰っていった。

 

「お前ら、どこの坊主だ。あれ?なんか見たことのある顔だな。」

 

「すみませんでした。もう2度としません。」

 

すかさず僕は「ヤバイ。バレる。」

 

と思い守衛の注視から逃げるように和樹と二人、工場入り口を後にしたのだった。

 

「おい、待て。」後ろから声が聞こえたが、ここで念入りに調べられて僕達がゴールドキッズであることを思い出されることだけは避けたかったのだ。

 

親に通報でもされたら大変なことになる。

 

もしそうなったら、全て計画がぶち壊しになることがわかっていた。

 

でも計画はこうして今があるように失敗に終わってしまったと言っていい。

 

僕たちは途方にくれ来た道を戻るしかなかった。空は、もうすっかり明るくなっている。

 

それを認識せざるを得ないのだがどうしてもこのまま終わるには余りにも残念に思えて何度も溜息が出てくる。

 

ブゥゥゥーーーーウゥーン

 

両肩を落とし俯きながら歩く僕たちの横を尻目に、通り過ぎ行くトラックのエンジン音。

 

それが一瞬僕達の横で待ち構えていたかのように高くなったかと思うと追い抜いた途端に噴煙をあげながら素早く低音に変化し、逃げるように去っていく。

 

まるで僕たちに対して、びゅんびゅん通り過ぎていくトラック達が、「ざまあみろ。」とあざ笑い馬鹿にしている気がしてならなかった。

 

「どうする?兄ちゃん?」

 

活路が絶たれてしまった状態である。

 

「仕方ない。次をあたるか、違う方法を考えるしかないだろ。今の俺たちにはただ闇雲にこうすることしか出来ないんだからな。」

 

次の違う方法といっても、他にあるだろうか?不安である。

 

先行き不透明なだけに、実行する為には、これから待ち構えている数々の困難に立ち向かわなくてはいけなく、荊棘の道を進むしかなかった。

 

「はあ~うまくいかないもんだな。」

 

と僕はため息をついたその時である。

 

プゥォーーン

 

さっきの汽笛にも似たクラクションである。

 

音の鳴ったほうに目をやると、そこにはだだっ広いコンビニの敷地内に、さっきのトラックが停まっていた。

 

「えっ?もしかして・・・載せて行ってくれるのだろうか?」

 

薄っぺらいほのかな期待に胸が高鳴る。やった。駄目かと思われたが、思わぬ幸運である。

 

いやまだわからない。肩透かしという場合も充分あり得る。期待を大きく持つとダメだった場合の反動が大きくなるというものだ。

 

僕たちは逸る気持ちを抑えて急いでそのトラックに走っていった。

 

 

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2021年02月05日

ボンベレスダイブ95

 

「友達?」

 

「そうです。僕たちと、同じ施設で育ってきた友達に会いに行くんです。」

 

「その友達は何で愛知県にいるんだ?」

 

「僕たちと同じように施設を抜け出して、愛知県の日間賀島って所にいるんです。」

 

「なら何もそんなに焦って会いにいかなくてもいいじゃないか。

 

どうせほとぼりが冷めたら、その友達は、またつまんなくなって施設に戻ってくるんじゃないのか?」

 

「ダメなんです。僕たちが、会いにいってやらないと。」

 

「おい、どうした?植村?」

 

いきなりトラックの後ろから人が歩いてきて、運転手に話しかける。

 

「何だ。お前ら、邪魔してんじゃねえ。とっとと、そこをどくんだ。」

 

トラックの前に邪魔をして立っている和樹の存在に気づいた途端、

 

まるで野良犬を追い払うかのように手をしならせて邪慳にその男は追い払おうとしていた。

 

その時、和樹が大声で叫んだ。

 

「彼女は、とても弱くて、いつも自分の生い立ちを恨んでは、嫌なことがあったりすると、リストカットして気持ちを表していました。

 

この前も、生きるということに嫌気がさしてリストカットしたんです。

 

挙句の果てに施設を抜け出し、今、愛知県に行っているんです。

 

このまま僕たちが行ってやらないと、彼女は自殺するかもしれません。

 

自殺をくい止めるために、僕たちが行って防いでやらないと。」

 

和樹はひたすらトラックの前で運転手の男に向かって、必死に話しかけた。

 

「駄目だ。駄目だ。そんなこと言っても。早くそこをどくんだよ。坊主。」

 

歩いてきた男に、いとも簡単に僕たち二人は、両脇に抱えられ持ち上げられていた。

 

その直後、トラックは唸り声をあげ、ものすごいエンジン音をふかし去っていく。

 

「離せぇ~離せぇ~」

 

僕たちは、手足をバタつかせて必死に抵抗を試みたが、男の力には、到底かなうはずもなく、その力に従うしかなかった。

 

第二関門突破ならず。

 

粋がっていた僕たちの運命もここまでだったかと思うと次第に力が失われていくのがわかった。

 

僕たちは、守衛のいるところまで運びこまれた。

 

「おい、駄目じゃないか。しっかりみてないと。こそ泥が侵入してたぞ。」

 

男は、僕たちを下へ降ろすなり守衛の男に向かって激しく叱責していた。

 

「あれ?何だお前ら。どうしてここに入りやがった?」

 

男はとてもびっくりした様子を隠す事が出来ないというふうで僕たちに向け言い寄った。

 

「こんなことが、二度とないようにな。」

 

「はい。どうも、すみません。以後、気をつけます。」

 

守衛の男は、大変申し訳なかったというふうに、かついで来た男にペコリと頭を下げているのだった。

 

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南安城整骨院・接骨院のおもしろい院長ブログ

安城市にございます南安城整骨院では、院長がブログを配信中です。院内の出来事や治療の事、お体の事、あるいは日常のちょっとした出来事などを綴っておりますが、ご覧いただいている常連の患者様などからは、文学調で面白いとか、エッセイを読んでいるようだとの感想を頂戴しております。
単に痛みの話や交通事故治療の話を語り、南安城整骨院・接骨院にいらしてくださいというのではなく、どこか小説を読んでいるような面白さでございます。是非一度、ご覧いただき、院長の成りや人柄、考え方に触れていただければ幸いです。
整骨院・接骨院での治療は直接お体に触れ、患部の症状を和らげていきます。そのため、やはり施術する人がどんな人であるのかは、患者様の関心事でございます。ブログを見て、この人なら任せられると思った方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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