2020年12月04日

ボンベレスダイブ79

「あれ、あの人、杉山っていうおじさんじゃない?」

 

和樹もすぐにあの男だと認識したようだ。

 

「あのおじさん。俺たちの家を、知っていたんだな。」

 

「あんな大きい車、乗っていたんだね。」

 

それは白いシボレーだった。三河・・・・

 

「三河?やっぱりあのおじさん。愛知県から来たのか。」

 

男は、しばらくの間、こちらをジッと見て何やら考え事をしているように見えた。

 

身に着けていた黒のスーツが、喪服を意識させ今の気持ちを表しているかのようだった。

 

男は悲しそうな顔をしてこの雨の中、さっきから長時間たたずんでいる。

 

泣いているように僕には感じた。

 

それを見ているうちに、

 

僕の中に今までに感じたことのない淡い感覚が押し寄せてきた。

 

この男と関わった何日間の思い出もさることながら、

 

何であるか?わからないが、もろくてはかない物への哀愁にも似た感覚、

 

今にも潰れて壊れてしまいそうな物に対する慈しみにも似た感覚。

 

それらが、全身を支配して僕を悲しみに包み込んでいた。

 

和樹を見るとすでに泣いていた。

 

和樹と男は、互いの距離はあるにせよ、

 

顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

 

僕は、窓を開けた。

 

ゴオォォー

 

ものすごい風が室内に侵入してくる。

 

たちまちにして部屋の中が荒れ狂う風に占拠され支配されていた。

 

舞い上がる紙類、忙しなくたなびく壁に貼り付けてあるポスター。

 

風は部屋の中に入るや否や、

 

待ってましたといわんばかりに室内を縦横無尽に暴れまわった。

 

到底、この風では、男に何かを言おうと思っても

 

距離が遠すぎて聞こえるはずもなかった。

 

「助けてくれてありがとう。」

 

無駄だとわかりつつも和樹が大声で叫んだ。

 

聞こえていないに違いない。

 

男は、そんな僕たちに向かい手を振って応えてくれていた。

 

雨は尚も容赦なく男の顔を叩きつけている。

 

一瞬、男の肩のラインが下がった。

 

僕はそれを、ため息だったと判断できた。

 

まるで、今日で永遠のお別れという感じが伝わってきた。

 

男は、もうこれで全てをやり終え充分といった満足気な表情にかわり車に乗りこもうとする。

 

「待って。おじさん。待って。」

 

和樹は大声で叫んだが、男には何も聞こえていない。

 

この暴風雨の中じゃ聞こえるはずもない。

 

取るものも取らず、僕たちは一階へダッシュした。

 

近くに寄り、和樹を助けてくれたお礼だけでもしたいと思ったからだ。

 

玄関を出て急いで道まで出た時には、

 

男の車は僕たちの前方二百m先にいて、

 

だんだんと遠ざかっていった。

 

そして車は見えなくなってしまった。

 

遅かった。

 

「今から、この台風の中、愛知県まで帰っていくのかな?」

 

見えなくなった車を残念に思いながら和樹がポツリ呟いていた。

 

 

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2020年12月02日

ボンベレスダイブ78

 

台風十五号は依然強い勢力を保ったまま、

 

太平洋上を関東の南五十kmにあって

 

東へ毎時十五kmの速さで進んでいた。

 

中心気圧は九百八十五hpa、

 

中心付近の最大風速は四十m/s。

 

昨夜九州の南にあった台風は次第に進路を東寄りに変え、

 

今朝になると関東の南の海上を進んでいたのである。

 

いくら関東に在るといえども、

 

我が家近郊は電線が断線したり、

 

木がなぎ倒されたりと、

 

台風独自の猛威を振るっていたのである。

 

関東周辺の海域は大シケで厳重な警戒が必要とされた。

 

わが金田家も昨日の事があり、

 

父ちゃんから外出禁止令が発令され、

 

警戒厳重体制がとられていた。

 

そうされては従うしかないので僕たちは、

 

二階にある自分たちの部屋で

 

じぃっとしながらラジオを聞いていた。

 

猛烈な勢いで窓ガラスを暴風雨が叩いている。

 

ゴオォォーーと物凄い音をたてながら、

 

あらゆる方向から攻めてくる激しい風が窓ガラスをしならせ、

 

時にはサッシごとガタガタと軋ませていた。

 

通常の僕たちであれば、そんなことにビクビクするほどの小心者ではなく、

 

むしろ一喜一憂するのであるが、

 

今は、とてもそんな気分にはなれなかった。

 

体中が、錆付いたように硬く、

 

鉛がついているように、とても重かった。

 

ゴオォォォーー

 

情け容赦なく暴風雨が窓ガラスを、

 

蹴散らしにかかっている。

 

僕のバイオリズムの波長は、

 

もし今調べるならば一番の底辺にスポットがいくだろうと思う。

 

何気ない音でさえも不快な音の一つに感じ僕の癇にさわった。

 

ガタガタガタ

 

特に、このサッシの軋む音は最悪である。

 

まるで、僕の錆付いた関節を同時に軋ませるかのように、

 

連動して全関節を震わせた。

 

ガタガタガタ

 

ゴオォォォー

 

当分の間、鳴りやまない意欲を減退させる暴風雨による振動音。

 

この音や風は今や僕の関節を軋ませるばかりでなく、

 

僕の心に開いたちっぽけな穴をすり抜けて、

 

除々にその穴を大きくさせようと暴れまくっているようにも僕は感じていた。

 

プゥー!!

 

ラジオから流れてきた時計の音は正午を告げる。

 

僕はぼんやりと荒れ狂う暴風雨に痛めつけられている外の景色を見ていた。

 

家から3m間隔で、

 

街路樹のプラタナスの木が道路に沿って均等に並んでいる。

 

時折吹く激しい暴風雨に、それは棚引いていた。

 

そんな時である。

 

家から20mほど離れたプラタナスの木へと

 

一台の乗用車がはるか後方より現れて、

 

その背後に止まったのだった。

 

僕は、それを見てこの台風の時に運転するなんて

 

もの好きな人も中にはいるもんだと奇妙に感じていた。

 

中から出てきた人を見てさらに僕は驚いた。

 

「おい、和樹。あれ見ろ。」

 

僕は一台の車を指さして言った。

 

男は車を降りプラタナスの木の隣に立ちこちらをジッと見ていた。

 

プラタナスの木は防風の役目をしてはいたが、

 

それでも情け容赦なく雨と風が男に襲いかかっていた。

 

 

 

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2020年12月01日

ボンベレスダイブ77

 

 

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2020年11月29日

ボンベレスダイブ76

 

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2020年11月26日

ボンベレスダイブ75

 

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南安城整骨院・接骨院のおもしろい院長ブログ

安城市にございます南安城整骨院では、院長がブログを配信中です。院内の出来事や治療の事、お体の事、あるいは日常のちょっとした出来事などを綴っておりますが、ご覧いただいている常連の患者様などからは、文学調で面白いとか、エッセイを読んでいるようだとの感想を頂戴しております。
単に痛みの話や交通事故治療の話を語り、南安城整骨院・接骨院にいらしてくださいというのではなく、どこか小説を読んでいるような面白さでございます。是非一度、ご覧いただき、院長の成りや人柄、考え方に触れていただければ幸いです。
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