2020年06月06日

ボンベレスダイブ2

再度、カメラに顔を向けると嵐のような連射が彼女を襲う。返事をしない男の代わりに休まることのない執拗なまでに繰り返されるカメラのシャッター音。まるで早くしろと言わんばかりの苛立ちが入り混じって女の子に襲い掛かってくる。

「何、下向いてんだよ。笑って。早く。こっち向いて。」

女の子の困っている姿など、いっさい自分には関係ないといった面持ちで冷酷に受け流す。

パシャッ!

「聞こえてんのか?おい。早くこっち向けって言ってんだ!いつまでも下向いてんな!!」

耐え切れず男は大声になる。魑魅魍魎の憑依によるものだろうか?いきなり豹変した男の震えた声には半分は苛立ちといった震えが、半分は脅しともとれる震えが含まれている。

「あのうぅぅぅーーー・・・」

「ばっきゃあろーー!もじもじするな!早くしろ!!」

一瞬、まるで弾丸でも弾かれたかと思うように飛び出していく男の断綴型罵詈雑言。女の子は思いもよらない情動の赴くまま発せられた男の言葉に面食らってしまう。間髪入れず男が言い返すところからして、つけ入る隙など決して彼女には与えさせてくれない。

カメラを構えながら冷たく突き放す男のそんな荒々しい怒号に、とうとう女の子は驚きのあまり顔から完全に笑みが消え、何一つ言えない状況になってしまう。若さが漲り、活発だった彼女の体は、動きだけでなく呼吸さえも少しの間、凍りつき、身じろぎ一つする事無く静止したままになっている。

「いいか。もう一回言うぞ。こっち向け。そして早くしゃがめ。いいな。じゃないと俺は何をするかわかんないぞ。」

男は低いしっかりとしたスローテンポの声で言い放つと女の子の顔をじっと見据えている。

まさに蛇に睨まれた蛙。

止まっていた呼吸が急に動き出し、猛烈な勢いで上下運動を始めだすと、女の子は嫌とは思いつつも観念したように、その場にしゃがみ込む。そして、ゆっくりと控えめに両足を開ける。抵抗するというよりも隷従の道を選ぶしかない。この状況では・・・

パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!

待ってましたと言わんばかり無理な態勢になりながらもフラッシュの嵐を浴びせかける男。

「いいよ。いいよ。やれば出来るじゃないか。はい、じゃあ次は下着を脱いで。」

「私、帰ります。」

嫌。そんなの絶対出来ない。このままだと、段々エスカレートしていってしまう状況に女の子は、耐えかねて堪らずに立ち上がる。そんな反発した状況に、男は、いい加減業を煮やしたらしく、持っていたカメラを首に掛けると、渋い顔を作りながら、ゆっくりしっかりとした歩調で歩み寄ってくる。

「このままで終われると思うなよ。この小娘。」

今までにない脅しと強弱をつけた凄みのある低い声。とうとう男は切り札であるジョーカ

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

GHOST 本購入はこちら

世直しドクター 本購入はこちら

Facebookはこちら

アメブロはこちら

住所:愛知県安城市日の出町2-20

公共機関:名鉄西尾線 南安城駅 徒歩3分
JR 安城駅 徒歩10分
安城市内循環あんくるバス0番
「日の出」バス停留所より徒歩0分

TEL:0566-45-5427

メールでのお問合せはこちら
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

2020年05月31日

ボンベレスダイブ1

 

パシャッ!パシャッ!

「いいよ。その調子だ。」

女の子は、慣れない状況に顔を赤らめつつもポーズを決める。

「うまいねえ。どっかのモデルさんみたいだ。もっとはしゃいでみせてよ。」

パシャッ!パシャッ!

男は、足場が悪い事など全然気にしていないといった感じで、カメラのアングルを巧みに変えながら、尚も写真を撮り続ける。

そんな男の褒め言葉に少し照れつつも無邪気に振舞う女の子は、一段と澄んだ瞳を輝かせ上目使いに甘えてみせる。

モデルという言葉を聞いた事により、ますます御機嫌麗しくなった子猫ちゃん。

彼女は更に森の中を自由自在に走り回って、妖精のように跳んだり跳ねたりを繰り返す。

「次はこっちに来て、その木に、もたれかかりポーズをとってくれるかな?」

「は~い。」

かわいくおどける仕草などは、まだまだ中学三年生のあどけなさを感じさせる。

真っ直ぐに伸びた長い髪と、しなやかな身のこなし。穢れを知らない大きな瞳が女の子の清純さを物語る。顔に満面の笑みを、こぼしている所が、男に対して彼女なりの従順の証。お互いを思いやる信頼の掛け合いは抜群である。

いや、[抜群だった]と言った方が正しいだろう・・・次の一言を発するまでは・・・

「は~い。いいよ。じゃあ、次はその場に座り、こっち向いて両足広げてくれるかな?」

「えっ?」

一瞬、耳を疑う。

パシャッ!パシャッ!

瞬時に女の子は身の危険を感じカメラから顔を背ける。

でも鳴りやまない乱暴なまでのカメラのシャッター音。その場に背を向けて立たずんでいる女の子に、その音は情け容赦なく浴びせかけられる。

[何で私がそんな格好をしてみせなくちゃいけないの?]そういった考えが素早く彼女の脳裏をよぎる。

この時である。今までまどろんでいたはずの空気が一変し、一気に加速し始めていったのは・・・自然に耳に聞こえてくるシャッター音が、しつこいほどに背中に覆い被さってくるのを感じとると、彼女の顔は段々と強張り始めていく。

「こっち向きなよ。今の言葉、聞こえたよねえ?はい、じゃあやってみて。」

あくまでもリズミカルに言いながら男は平静を装うと、女の子に、にこやかな顔を見せつけて、わざと明るく振舞っている。何も起こっていないような沈着冷静ぶり。

「あのうぅぅーーー!そんな事、聞いてないんですけど・・・」

パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!パシャッ!

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

Facebookはこちら

アメブロはこちら

住所:愛知県安城市日の出町2-20

公共機関:名鉄西尾線 南安城駅 徒歩3分
JR 安城駅 徒歩10分
安城市内循環あんくるバス0番
「日の出」バス停留所より徒歩0分

TEL:0566-45-5427

メールでのお問合せはこちら
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

2020年05月19日

湖の妖精4

 

大皿を持ち上げる。

俺のか細い上腕2頭筋にズシンッとその重みが伝わってくる。

あまりの重さに足元がふらつく。

「しっかりせえよ。なんだ。そのへっぴり腰は。

よくそれでここのウェイターが務まるもんだ。」

口の悪い魚のハタが再度、俺に向けて檄を飛ばしているような気がする。

気になって中を覗いてみる。

大皿の中で波立った蒸し汁に乗って

ハタがハタハタ揺れながら海の舞いを見せている。

「今に見ていろ。みんなの目の前で俺がお前を切り刻んでやるからな。」

運んでいる最中に歩きながら魚に憎しみを込めて言ってやる。

12番の円卓の前まで来ると一旦俺は立ち止まり

「お待たせいたしました。ハタの姿蒸しでございます。」

と言いながら円卓の回転テーブルに

ふらつきながらも何とか大皿を載せる。

ここまでは何とか頼りないまでも俺としては順調に進めている。

「ただいまから、お魚を皆さまにお取り分けさせていただきます。」

一礼すると配膳台に置いてあるデカいスプーンとデカいフォークを取り出し

それを向かい合わせて作り、にわか仕立てのトングをこしられる。

お客の前でカチャカチャと音を鳴らしトングの出来を確かめる。

動きは問題ない。俺の手の動きも絶好調。いいようだ。

ここまで拝見すると、俺はものすごい料理の達人のように見える。

円卓のお客は全部で5人。

「覚悟しろ。ハタ本退屈男」俺は心の中で呟く。

ちなみにこの魚のハタに関しては俺はいつも同じ呼び名で呼ばず

気分次第でいろいろな呼び方で呼んでいたりする。

今日の気分は眉間に傷のようなものを発見したから

コイツの呼び名はハタ本退屈男って気分だ。

俺は前傾姿勢になり、まずハタに1刀入魂。

魚の頚部から尻尾にかけてデカいスプーンで切れ目を入れていく。

中国語が飛び交いながらも取り分けている俺の手元に

5人のやけどしそうなほど燃えるような熱視線が集まってくる。

その視線が俺をぐるりと取り囲んで360度感じると緊張して俺の手が震え始める。

こんな状況の中で手が震えない方がどうかしてる。

この5分割にしなきゃいけないという中途半端な奇数の数字も

俺を苦しめている要因である。

難しく考えすぎかもしれないがこれが友達ならたとえ不均等になっても

「まあいいじゃないか。ゆるせ。」で終わるのだが

これが見ず知らずの初めて会った人、

しかもその人たちの身内あるいは友達たちが周りを取り囲んでいる中で

5等分しなければいけないという使命を与えられている場合にはそうはいかない。

状況から言ったら四面楚歌そのものの状態であると言っていい。

だいたいどんな量かというものを

あらかじめイメージしておかなければならない。

しかも魚のやっかいなところは片面だけではない。

途中でひっくり返して両面魚の身をそぎ落として

トータル5等分しなければいけないという技術が要求される。

跡に綺麗に残されるのは身ぐるみはがされた魚の骨と内臓のみ。

1皿目を手元に置きながらまず俺は魚の片面の3分の1取ることに成功する。

そしてそのあと巨大トングを再度魚に持っていき、

少しだけ身をホジホジして身を持ってくれば理想とする5等分になるのだ。

よし1皿目完了。ここまでは順調。順調。

と思っていた矢先の出来事だった。

「ガチャン。」

俺の手元が狂い

手に持っていたトングの片方が滑り

大皿の蒸し汁の中に水没してしまう。

「しまった。」その瞬間、俺の顔が真っ青になる。

落ちたのはデカいスプーンの方だった。

まさか蒸し汁の中へ指を突っ込み手掴みで引き揚げてやることも

皆が見ているこの状況では、かなりはばかられる。

そんなこと絶対してはいけない。

もしこれがラーメンだったらスープの中に親指を突っ込んで

「へい、おまち。」とお客に言ってるようなものである。

ヘマしちまった。こうなったらもう大変である。

時間的にも流暢なことをしてる暇はない。

はやくしなければ・・・どうしようということになる。

「ただいま新しいものと取り換えてまいります。

しばらくお待ちください。」

と言いながらデカいスプーンを取りに厨房へと向かう。

もう頭の中は真っ白。「あ~やらかしちまった。」という思いしかない。

何を俺は今からしようとしているのかわからなくなりつつある。

「失礼いたしました。」と言いながら円卓に急いで戻るも

頭の中で計算していた5等分なんてものは

もうすでにどこかへ消え飛んでしまっっている。

元の位置に着くと手の震えが前よりも一段と激しくなっているのがわかる。

お客を待たせてしまっているという負い目があり気持ちばかりが焦る。

2皿目を取り分けなくちゃと考えていると

「おい。リーベンレン(日本人)。まずもってさっき大皿の中に落とした

大きい方のスプーンを取り除かなくてはダメだろ。

そんなこともわからないのか。

そのままにして俺たちに食べさせる気だったのか。」

と食い入るように見ていた俺の右隣に座っていた中国人のお客の一人が激しく攻め立てる。

「あ、そうでしたね。すみません。」

慌てて蒸し汁の中のデカいスプーンを

にわかに作った新しいトングで取り上げようとする。

ところがスプーン自体がとても重くて大きさに比例した重量があり

手が激しく震えて何回やっても水没した大皿の中から救い出すには

かなり難しくなっていて多くの時間がかかってしまう。

そうこうしているうちにスプーンをすくうつもりが度重なるすくい上げ失敗に対し

魚の片面が俺の巨大トング攻撃により荒らされ放題になり

魚の身が崩れに崩れて信じられないくらいの

ほぐされた身の小ささになっている。

「何してんだ。リーベンレン。へたくそ。」と右隣の男。

「はやくしてくれよ。腹が減ってるんだから。」と正面の男。

「あんなに魚の身を細かくほぐされたら魚を食べてる気がなくなりそうだわ。

私たちは魚を食べに来ているんであってフレークを食べに来たんじゃないんだから。」

と斜め左の女性。

「あんなんじゃきっと食べてもマズくなりそうよね。」と左隣のご婦人。

「このウエイター若いからきっと学生だぞ。本職じゃなさそうだ。」

と斜め右の男。

中国の老若男女合わせた5人。

この時ばかりは中国語で話さず俺に聞こえるように日本語にチェンジしている。

みんな好き勝手に思いついた文句を俺に向けて言ってくる。

あちこちから苦情が飛び交い今、俺は嵐の中にただ一人取り残された状態である。

針山の上に寝かされてると言っても過言ではない。

何と言われようともこの場を乗り切らなくては・・・

頭から湯気が出て心が折れそうになるが

ここまでケチョンケチョンにされたらもう気合いしかない。

イメージとしてはピクリとも笑わない観客の前で面白くないお笑い芸人が

1時間気合いだけでステージをこなすようなものである。

とうとうダメ出しされつつも何とか頑張り続け

最後まで俺は5人全員に魚の身をそれぞれ小皿に取り分けることができたのだった。

 

つづく

 

f7514f4ce5a2272dabd1d3521189a7d1

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

南安城整骨院HPページ

Facebookはこちら

アメブロはこちら

住所:愛知県安城市日の出町2-20

公共機関:名鉄西尾線 南安城駅 徒歩3分
JR 安城駅 徒歩10分
安城市内循環あんくるバス0番
「日の出」バス停留所より徒歩0分

TEL:0566-45-5427

メールでのお問合せはこちら
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

2020年05月15日

湖の妖精3

俺がグズグズしているので

俺の居ない間、身代わりとして

配膳を押していた女性によって前菜が運ばれいき、

もうコース料理は中盤に差し掛かっていた。

このまま俺の出番なく終わらないかな・・・と甘く考えている。

そんな思いも束の間、ちんたらしていた俺にすかさずシェフ・ワンの檄が飛ぶ。

「おい。誠。いつまでもしょげてんな。

料理が出来てるぞ。冷めちまうじゃねえか。

早く持って行けって。」

やはり甘い考えだった。サボらせてくれない。

「はいよ。」と言いつつも

なにもこんなコロナの時に来なくたっていいじゃないか。

俺が感染でもしたらどうしてくれるんだよ。

心の中で俺は呟く。

12番のお客さんに持っていくの何の料理ですか?」

「見てわかるだろ。お前の大好きなハタ坊だ。」

皮肉を込めてワンが笑いながら俺をからかう。

中国人のシェフというのは働くときは一生懸命働くが

間がさした時なんかは人が嫌がっていることを

ズバンと的確にとらえ小憎らしくなるほど逆なでしてくる。

「はあ~。」

それを聞いて俺は深くため息をつく。

わっ。あの面倒なハタの姿蒸しかよ・・・

気がのらない。

俺は足取りも重くトボトボと

魚のハタの姿蒸しが置かれているカウンターへと歩いていく。

そこには高温で蒸された大きな魚が大皿の中で

体をくねらせ俺に向け熱湯地獄だったことを証明するように大口を開けて湯気を出しながら蒸し上がっている。

俺と目が合う。

「なんだ。お前みたいな間抜け野郎がこの俺様を運ぶのか。」

とハタの野郎が言ってるような気がする。

「俺で悪いか。いい湯加減だったか?」

と俺も皮肉を込めてハタ坊に言い返して悔しさを紛らす。

 

つづく

 

Vector illustration of elf on white background.

Vector illustration of elf on white background.

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

南安城整骨院HPページ

Facebookはこちら

アメブロはこちら

住所:愛知県安城市日の出町2-20

公共機関:名鉄西尾線 南安城駅 徒歩3分
JR 安城駅 徒歩10分
安城市内循環あんくるバス0番
「日の出」バス停留所より徒歩0分

TEL:0566-45-5427

メールでのお問合せはこちら
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

2020年05月12日

湖の妖精2

「さっき奥で力なくしょげてたの見ました。」

厨房の中で働いているシェフのワンがチーフに言う。

「アイツ。またさぼってんのか。まったく・・・しょうがない奴だな。」

チーフが厨房の奥をズンズン進んでいく。

行った先には倉庫があり

くだものや野菜の入った段ボールが食材別に積まれてある。

奥のじゃがいもの入った段ボールに腰掛けている一人の男を見つける。

それがこの俺である。

それを見たチーフが俺に向け怒鳴りつける。

「こら。誠。食べ物の段ボールに座るなってこの前から

何回も言ってるのがわからないのか。お客様の大切な食べ物なんだぞ。

傷んじまったらどうしてくれるんだ。」

「すみません。」

力なく俺は応え、ゆっくりヨイショと立ち上がる。

「うちはジャッキーチェンも来たことのある格式の高い中華料理店なんだ。

その辺のところをよくわきまえろ。」

またか・・・何かと言うとチーフは2言目にはジャッキー・・・

ジャッキーである。

最初のころは「へぇ~すごいんだな。」と感心したものだが

あまりにもチーフが何回も自慢して言うものだから

最近、俺の中で今となってはどうでもよくなってる。

ジャッキーチェンと聞いてもなんてことない。

ただのカンフー好きなオッサンに成り下がっている。

「おい。12番の円卓のお客様がコース料理をご注文された。

お前の出番だ。頑張ってくれよ。」

「えっ~またですか。勘弁してくださいよ。

さっきも俺が別のグループのお客さんをとりわけたところなんですよ。」

と不満を漏らす。

申し遅れたが俺、月俣 誠(つきまた まこと)。

この中華料理店でウエイターを務めるアルバイト学生である。

ウエイターと言っても

どういった仕事内容かと言うと

客式の高い中華料理店なので

黒服のスーツをビシッと着せられ

自分の担当になったテーブル番号のお客の頼んだコース料理を

円卓に配るというものである。

当初、始めたころはシェフのワンが俺のスーツ姿を見て

「孫にも衣装だな」と茶化しにきたものだ。

ただ俺の仕事はこれだけだと思うと大間違いである。

それだけではない。

デザートの小皿をお客それぞれに配るならまだいいが

面倒なのはその次に控えている大皿料理である。

こんなチンケな普通の大学生にそんな大それたことさせるなよと

この店のオーナーに言いたくなるのだが

たとえばお客が7人いたら

中央に乗せられた大皿料理をそれぞれ7人に配るという

大役を仰せつけられている。

これの難しいところ・・・

それは7人均等に分け与えること。

サラダやらマーボ豆腐といった分量が適当なものならまだいいが

エビのチリソースなんかは

お客同士は隣人と愉快に話をしていたとしても見てないようなフリをして

じつは穴の開くほど俺の手つきをよく見ている。

たったエビ一尾隣の人が多かっただけで文句を言ってくるのだ。

ひな鳥が親から運ばれてくる餌をたよりに何羽かのひなが

口を大きく開け待っているようなものである。

俺がこの仕事を始めたきっかけ・・・

それは時給がいいのに目を奪われたことによる。

「しょうがないだろ。人が居ないんだから。頼んだぞ。

くれぐれも失礼のないようにな。」

チーフが念を押してくる。

「はいはいわかりました・・・こんな感染の危険のある・・・くそ面白くない・・・」

小さな声でチーフにわからないように反論する。

むしろ俺は今のこの時期に関して言えば

バイト料云々よりも命を大切にする派なのである。

「そうだ。言い忘れた。12番テーブルのお客様、中国のお客様だからな。」

聞いた瞬間、足がもつれて俺はコケそうになる。

 

 

つづく

 

79584989_220x220

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

南安城整骨院HPページ

Facebookはこちら

アメブロはこちら

住所:愛知県安城市日の出町2-20

公共機関:名鉄西尾線 南安城駅 徒歩3分
JR 安城駅 徒歩10分
安城市内循環あんくるバス0番
「日の出」バス停留所より徒歩0分

TEL:0566-45-5427

メールでのお問合せはこちら
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

南安城整骨院・接骨院のおもしろい院長ブログ

安城市にございます南安城整骨院では、院長がブログを配信中です。院内の出来事や治療の事、お体の事、あるいは日常のちょっとした出来事などを綴っておりますが、ご覧いただいている常連の患者様などからは、文学調で面白いとか、エッセイを読んでいるようだとの感想を頂戴しております。
単に痛みの話や交通事故治療の話を語り、南安城整骨院・接骨院にいらしてくださいというのではなく、どこか小説を読んでいるような面白さでございます。是非一度、ご覧いただき、院長の成りや人柄、考え方に触れていただければ幸いです。
整骨院・接骨院での治療は直接お体に触れ、患部の症状を和らげていきます。そのため、やはり施術する人がどんな人であるのかは、患者様の関心事でございます。ブログを見て、この人なら任せられると思った方は、ぜひお気軽にご相談ください。

治療や料金について 患者様からの声
ページの先頭へ