姐さんの名は、お龍
前回のブログでホテルマッサージの下積みの頃の話しをしたと思います。
今回はその続きです。
タコ部屋のことをお話ししたと思いますが、
そのタコ部屋での出来事です。
やはり一つの集まりがあるところには必ずリーダーって人がいるもんです。
そのタコ部屋にもリーダーが居まして、ビジネスホテル6畳1間の部屋の中に座布団が3枚ほど高く積まれ、そこにリーダーなる存在が座る訳です。
その周りを下っ端の我々が取り囲む形を取っているという具合です。
勿論、そのビジネスホテルの客だけに要望があればマッサージしに行くのかと問われれば全然違いまして
周りを取り囲むホテル群やら、ある時は10km20km離れた高級ホテルへと足を向けることは多々ありました。
ある時のことです。
先に来た3人のマッサージ師たちは注文があり出払っていて
偶然その部屋には私とそのリーダーしか残って居なく、必然的に私がそのリーダーへマッサージを施していたんです。
リーダーである彼女の名は龍。なんとも凄味のある名前です。
そんな時でした。
勢いよくタコ部屋のドアが開けられた途端、「わあぁぁうわぁ~ん」という大声で泣き叫ぶ声が耳に入ってきました。
何事かとよく見るとつい5分前にお客さんからマッサージの注文があり部屋へと向かった若いマッサージ師の女の子だったのです。
龍「どうした?」
女の子「ヒック。ヒック。Φ§%〇5Δ〈¶¶ΘΦ」
嗚咽混じりに泣くので声がこちらによく伝わりません。
女の子「ベッド・・・男・・・横・・・裸・・・ハンカチ・・・」
龍「大丈夫だから。もっと落ち着いて言いなさい。」
私「部屋に入ったら男の人が素っ裸で仰向けに寝ていて大事な所にハンカチを載せて寝ていたと言いたいんじゃないですか?」
言葉の端々から私は素早くそう読み取りました。女の子は私の顔見て「うんうん」頷きます。
この時、自分の読心能力の凄さに我ながら感心しましたが。
私「龍さん。俺がこの子の代わりに行ってきましょうか?」
龍「あんたが行ってどうすんだい?」
私「そのお客さんのハンカチが被せてある大事な所を指先でチーンと弾いてお経でも唱えてやりまっさ。」
龍「馬鹿なこと言ってんじゃないよ。あんた。ちょっとそこをおどき。」
龍姐さんはマッサージしていた私をのけるとスッと立ち上がり部屋を出ようとします。
龍「何号室なんだい?その部屋は?」
女の子「505号室よ」
龍姐さんの行動たるもの。ものの5分もしない内に部屋を出て行ったかと思うと
30分後には何もなかったような素振りで戻ってきたのでした。
何がそこであったかは聞かないでいましたが、表情ひとつ崩さない凛とした姐さんのその仕草に
その日、タコ部屋の雰囲気はどんよりと重たい空気が流れたのでした。
さすがヤ〇ザの妻である龍姐さんのすること。聞かないまでも落とし前はしっかりつけたのだと思います。
ひぇ~こわぁ~
あれから龍姐さんには会っていませんが、今頃どうしているんだろう?
まだホテルマッサージをしてタコ部屋では相も変わらず下っ端に自分の体を揉ませているんだろうか?
と思う時があります。
今ではいい思い出になっています。
おわり