ボンベレスダイブ107
ん?地震かな?目覚めた時、そう感じた。ここは、どこ?激しく回転するトルク音。濁った音を奏で、派手に振動しているエンジン音。ようやく事情がつかめた。そうだ、ここはトラックの中だ。今の時刻は?えっと・・・詳しい時刻はわからないが太陽の位置からして、どうやら昼時らしい。それにしても車内の揺れは尋常ではない。
体を起こし、車外を見てみる。愛知県という表示板が一瞬ではあるが見えた気がした。しかしこの速度、普通では考えられない。中央分離帯を埋め尽くす一本一本の木々が、車の後方へ消し飛んでいくように目に映る。ガタガタガタ トラックが分解しそうなほどのオトマトぺがそれを物語る。
左の走行車線を走っている車を見れば短時間の間に次から次へと車を追い抜きごぼう抜きしているのがみてとれる。今、何キロ出ているのだろうか?そっと、スピードメーターを見てみる。なるほど、百五十km。どうりで速いはずだ・・・
えっ~ひゃく、ひゃくごじゅうぅ~~~~ぅ!!!??
僕は、一瞬目を疑った。横には空のビール缶がいくつも転がっている。信じられないほどの数のビールの空き缶だった。それを見ると僕の脇の下は、じっとりと汗をかいていた。
隣の和樹を見てみる。
グーグー気持ちよさそうに眠っている。よくこの振動の中、眠ることが出来るものだ。
あきれる以外、考えられない。
植村を注意したいが注意できない、お世話になっているこの状況。この男、完全にメートルが上がっちまってる。亡くなってしまった弟のことがよほどショックなのだろう。僕もこの隣にいる和樹が死ぬようなことにでもなったらどうなるか想像もつかない。
注意したら、きっとこのトラックをつまみ出される事への計画不履行が、僕の肩に重くのしかかる。でもやっぱりそんなこと、よくない。こんなことを許していたら、植村のこれからのためにもならない。言うべきことは言うべきなんだ。ましてや僕たちの命がかかっているんだ。僕は、深呼吸して運転手の顔を見た。
アルコールとスピードのせいで植村の目が充血して血走ってる。まるで獣と化している。
「ちくしょぉ~なんれ死んれしゃったんらぁ~・・・!」
ろれつがまったく回っていない。ライオンが低い声でゴォーゴォー吠えたくっているようだ。「駄目ですよ。飲酒運転は。それにそんなにスピード出したら、危ないじゃないですか。」
「あぁ~?」植村が怒気に満ちた眼差しで横を向いた。
睨みつけられ、僕は思わずその気まずさに目を背け、真っ直ぐ前を見ることになった。その時である。前方を見た僕の目の先には高速道路の上を横切る高架があって、その上にはなにやら人影が見えたのだ。そんなこと絶対あり得ないと思うがライフルの照準をこちらに合わせ身構えている一人の男が見えた気がした。一体何をしているのだろう?あんな所で。いたずらなのか?全然、検討もつかない。その時、また植村のろれつの回らない声が始まっていた。
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