ボンベレスダイブ108
「うるせえ~。おれの勝手だ。お前らにとやかく言われたかねえ。いいかぁ~。そもそもだなぁ~・・・」このからみ具合からして、かなり植村は泥酔しているのが見て取れる。
僕はお粗末すぎて呆れた素振りをしようとしたまさにその時だった。植村が話し始めようとした次の瞬間、ピシっと鈍い破砕音と共に前方にあったフロントガラスが一瞬にしてバリバリと音をたてて砕けていったのである。
バキューン何かが暴発する音が立て続けに2回遠くで聞こえた気がした。
一瞬、何が何だかさっぱり訳がわからなかった。和樹が突然フロントガラスが割れたことにビックリして飛び起きていた。
気になって植村を見る。その状況を見るや僕は青ざめることとなる。植村はハンドルにもたれかかっていたのだ。
「おじさん。どうしたの?大丈夫?」
揺すってみた。ハンドルが少しではあるが左に旋回して植村の体は僕たちの膝の上にのしかかってくる形となった。「おも~い。」突然あまりの重圧感に思わず僕は押しのけてみるしかなかった。丸太ん棒を転がすように前に崩れていった植村を見て余りの変わりように僕は心臓がとび出そうなほど驚いた。「うわぁぁぁ~~」
それを見た和樹が、驚倒するほどの悲鳴にも似た声を発していた。
余りの驚きによって僕たちは素早く座席から立ち上がった。
「し、死んでる・・・」
植村は、右のこめかみを銃で撃たれて死んでいた。これを境に事態は急変する。
運転手のいないトラックは突然左に進路を移し、左車線に移ってもなお左、左と走行していった。このままでは、ガードレールにぶちあたることになる。
「あぶないぃ。」
ガシャーン!
僕の叫び声と同時にトラックは左側にあったガードレールを無理なくなぎ倒すようにぶつかって行った。ガードレールは酷くたわむ形でトラックを受け止める。
すさまじい衝撃が前輪の角度を変え、トラックを右斜め前方へと前進させて行く。バランスを崩した鉄の塊は完全に進むべき方向を見失い運転手共々酩酊状態となっていた。このまま行けば中央分離帯へ突き刺さることになる。しかし重心が定まっていないまま急に右に方向転換したことにより遠心力がついたトラックは、右側車輪が完全に浮き上がってしまいウィリー走行となっていた。そして左の車輪が支点となって車体全体を反時計回りに回る形となり進路方向へ横転して行ったのである。
ガシャーン!ガシャーン!ギギギギギーーーーーーィ!
その後、五、六m横すべりをする形となる。激しく絡むタイヤの摩擦音。破損した部分がむき出しとなりそれがアスファルトを削って派手に火花を散らしていた。右後方に取り付けてあった外側に面したタイヤが勢いよく飛び跳ねて外れていったのである。
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