ボンベレスダイブ101
トラックは首都高から東名高速に乗ろうとしていた。ようやく名古屋、大阪方面に進むことが出来る。進行方向に向け、舵をとれることに僕たちは、ホッと胸を撫で下ろしていた。
そんな時だった。
「俺の弟がよ~。」いきなりトラックを運転する植村が話しかける。
「えっ?」
「俺の弟・・・」
「・・・」
「俺の弟はなあ~。いい奴だったんだよ。」
「はい・・・」
的を得ず突然話してくるから、とても気を使うし、どう受け答えしていったらいいか、皆目見当もつかない。またしばらくの沈黙。話題になりそうなものを考えていると
「実にいい奴だった。いい奴だったし、いい家庭を持っていたんだ。」
勝手に自分の身内話を話し始める。
「はい~。」
また沈黙。僕は対処するのに困ってしまう。
ん?待てよ?今、いい奴だった。って聞いたような気がする。
ってことは・・・
「いつも、ここを通るたびに、湿っぽくなっていけねえや。」
僕が植村の顔を見た時、手で目のあたりをぬぐっている所だった。そして頬を見た時、涙で濡れているのが判った。鼻をすする音。この場所が植村にとってよほど忘れることが出来ない場所なのだろうということは簡単に推測できる。
プシューーー
小気味よい音がしたほうに目をやると、運転席からビールが勢いよくプルトップの周りで泡を出していた。なんか嫌な予感。少し酒臭い。
明らかに今からヤバいことをしようとしている。
飲酒運転でもしないとこの道を通る度、当人からすれば気持ちが修まらないのかもしれないが助手席に座らされてる僕達からすれば事故死するかもしれないという不安が常につきまとうことになる。
「あれは、その年が終わろうとする暮れも押し迫った頃だった・・・」
植村は語り口調で話し始めていた。
到底シラフの状態でこの話を他人である僕達に向けて話すにはかなり酷なのかもしれないが、だからと言って飲酒運転していいということにはならない。
これは明らかに常軌を逸している。
そうは思っても僕たちは、何はともあれ真剣に植村の今から話すその話の内容を聞きながら情景を頭に思い浮かべていた。
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