ボンベレスダイブ98
トラックの助手席に座ること自体、僕たちは初めての経験だった。
車内が意外と広いことには驚かされた。
椅子は、リクライニングシートになっていて、百八十度倒すことが出来る。
また椅子の背後にはカーテンがしかれてあって奥にはスペースがあり、あえてそこで寝ることも可能だった。
ジュースホルダーには、飲みかけの缶ビール。ん?まあいい。ここだけの話ってことで、これは見なかったことにする。
植村は、さっきの言葉を最後に、ずっと黙ったままである。
座席に座っていて、気まずい雰囲気なのは言うに及ばない。
うまく計画どおりに事が運んで嬉しいとは思う。
でも本当にこのトラックでよかったのか?という疑問さえ湧いてくる。
まあ、仕方ない。乗りかかった船だ。じゃなくて、トラックだ。
トラックは東北自動車道、佐野藤岡インターチェンジから乗り、東京へ向け進路をとった。
今度はちゃんとした方向へ向け無事に進んでいるようだ。植村の真面目そうな顔が人身売買に一切関係なさそうな感じがしてホッと一安心する。もう2度と同じ目には遭いたくないからだ。
トラックの快適な揺らぎ、朝早く起きたことによる疲れのせいで五分もしないうちに僕たちは、眠りの境地へと入っていった。時間にして、ちょうど一時間、僕たちはトラックの助手席で眠りながら身動き取れない姿勢が続いた。
やがてトラックは東京の首都高に合流、そこを尚もお互い無口なままシンと静まり返ったトラックが一台、走り抜けていた。植村は、缶ビールを飲み終え、それを灰皿がわりに、ぷかぷかとタバコをふかしている。単調ななりにも色んなことをして、あれやこれや忙しそうにしている。さらにトラックは四、五十分走っただろうか?
そこでようやく渋滞に巻き込まれてしまう。そしてジャンクションにさしかかったか?と思うと分岐するあたりで右へ左へトラックは進路をとっていた。その度に僕たちの体は、同じように右へ左へと揺れていた。
それまでは気持ちよく寝ていた僕達であったが、さすがにこんな左右への振り回される状況があると眠れるわけにはいかない。目に見えない植村に対する緊張もあり腰も膝も、直角位のまま凝り固まっていた。最初、快適だと思われた助手席は、これじゃあ生き地獄である。
「坊主たち。トイレはどうだ?」
「えっ?」
植村の突然の言葉に集中を欠いていた。
「トイレに行きたいか?と聞いているんだ。小便したいなら、パーキングによるぞ。」
「お、おねがいします。」
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