2021年01月06日

サブリミナルの如く  ~今この瞬間を輝くように楽しむ~

 

病室から見える桜が満開に咲き誇り

 

あまりにも美しかったので

 

思わず私は言ったんだ。

 

「綺麗だな・・・」と

 

「ええ。そうね。」

 

隣で聞いていたカミさんがそれに同調する。

 

そう。私は女房のことをカミさんと呼んでいたりする。

 

これには深い訳があって後になってわかると思うが・・・

 

「来年も同じように見れるだろうか?」

 

これは何も意識せず自然と私の口から出た言葉だった。

 

長い沈黙・・・

 

カミさんは何かを耐え忍ぶように押し黙っている。

 

かと思うとその直後、急に席を立ち

 

「喉乾いてない?何か飲み物でも買ってきますね。」

 

と言ったきり、そそくさと病室から出て行ってしまった。

 

病室に独り残された自分。

 

しばらくすると何やら嗚咽をもらすカミさんの声が・・・

 

病室の外から聞こえてきだす。

 

悲しみに耐えていたんだと知る。

 

それを知った瞬間

 

「しまった。」という感情が私を萎縮させる方向へと導き

 

私は取り返しのつかない後悔の念に苛まれる事になる。

 

 

 

カミさんと初めて会ったのは同じ大学の映画同好会によるもの。

 

「かわいい子」が入部してきたなと思ったのは私が大学3年の時だった。

 

ふとしたきっかけから誰よりも真っ先に

 

私はそのかわい子ちゃんと話をする状況に運よく至ったのだった。

 

お互い話をすると「刑事コロンボ」が好きで、あのピーターフォークのどんくささと

 

それとは反対に解決に導く時の切れ味の鋭さのジャップの違いを興味深く話すうちに

 

意気投合し合い

 

他の男どもの悪い虫がつく前に間髪入れず私は彼女を見事デートに誘いだすことに成功し

 

交際期間5年という期間を経て、ようやく見事結婚するという運びとなったのである。

 

言うなれば「刑事コロンボ」が私たちのキューピット役のようなものだった。

 

あれから35年。

 

早いものである。

 

子供たちもいつの間にか社会人となり

 

私たちから巣立っていってしまった。

 

さあて。これからのんびりと2人での生活が幕を開けようとしていた矢先の出来事だった。

 

私の体を病魔が蝕んでいるということを知ったのは・・・

 

ドクターから余命いくばくもないことを告げられたときには

 

頭が真っ白になって

 

一体なにが起こったのか?自分でも訳わからなくなったのを覚えている。

 

私よりも酷くとり乱したのは、むしろカミさんの方だった。

 

ドクターに詰め寄りながら必死で症状の度合いといったものを

 

真剣に聞いていた姿が昨日のように思い出される。

 

 

 

 

 

しばらくしてカミさんが病室へと戻って来る。

 

買ってきた飲み物をグラスへと注ぎ

 

私へ向け「はい。」と言いながら渡してくれる。

 

今さっき泣きはらしたであろうカミさんの目が真っ赤になっていて

 

それが気になって気になって仕方ないのだが

 

目を合わせるということにどうしても躊躇してしまう。

 

カミさんに対して申し訳ないという気持ちが勝り

 

あえて目を反らしてしまうのだ。

 

私の病気が発覚してからお互いハッキリものが言えない状態になっている。

 

 

 

 

「映画でサブリミナル効果ってあるだろ?知ってるか?」

 

うつむきながら私はカミさんに向け、いきなり話しかける。

 

「え?」

 

「急に何を?」といったように

 

驚きのあまり私の顔を眺めキョトンとしている。

 

 

 

 

 

「静止画像を動画の中に連続して混ぜ込むことにより

 

視聴者に気付かれる事無く

 

混ぜ込んだ静止画像のイメージが

 

見ている人の潜在意識下に植えつけることができてしまう手法のことさ。

 

例えば映画を見ている人にコカ・コーラを飲めとかポップコーンを食べろ

 

と書かれたスライドやらそのもの本体の画像を3000秒に1回の割合で映像の中に割り込み5分間繰り返したとすると

 

コカ・コーラとポップコーンの売り上げが増加するといった実験事例があるほどだ。

 

これがサブリミナル効果というもの。

 

たった0.01秒かなんかの混ぜ込んだ静止画像が見ている人の意識を変え

 

実際にそうさせたいという行動に移させてしまう。

 

つまりたった取る足らない画像が見ている人にとっては強烈なイメージとなり

 

映画の本編をしのぐほどの存在にまで成長することになってしまう。

 

それってすごくないか?

 

つまりさ。何が言いたいかって言うと

 

人生生きるうえにおいても長かろうが短かろうがたとえ断片的であっても

 

その人の生活に意識のうえで強烈に残ることさえしていれば

 

一生において振り返った時にそれがより鮮明にクローズアップされて描き出されてくるのではないか・・・と。

 

そう思うんだ。

 

ほら。刑事コロンボでもこのサブリミナル効果を利用して殺害に至ったという話があったじゃないか。

 

あれは確か・・・」

 

「第21話 意識の下の映像」

 

私が思い出そうとしていると即答で答えを出してくれる。

 

さすがカミさんである。

 

刑事コロンボに関してはカミさんの右に出るものは居ない。

 

コロンボもカミさんには頭があがらなかったようだが、私も同じようにカミさんには到底頭があがるはずがない。

 

「いいわよ。何かしたい強烈な何かがあるのなら一緒に付き合ってあげる。まず手始めに何がしたいの?」

 

「そうだな~」

 

腕組みしながら私は考える。

 

そうだった。愚かな考えを言ったものだ。

 

カミさんを元気づけようとして取って付けたような言い回しをしたのだが・・・

 

何も考えてなかったのである。

 

これじゃあ骨組みのない家に一緒に住もうと言ってるのと全く同じじゃないか。

 

 

 

いっそのこと自分でも到底成しえない計り知れない無理難題を

 

自分を試す意味でカミさんに提案してやろうか。

 

もしそうすると言い逃れはできそうにないと思うが・・・

 

「バンジージャンプなんかいいんじゃないか??」

 

咄嗟に思いついた荒業がこれだった。

 

今まで一度もやろうなんて考えたことなかったのに・・・

 

自分でもビックリするくらいの荒業の一つだ。

 

私の言葉を聞いた瞬間、カミさんはその場で腹をかかえて

 

ケラケラケラと子供のように笑っている。

 

「あなた、それ本気で言ってるの?

 

そんなの。絶対無理でしょ。本当にできるの?」

 

尚もカミさんは無邪気に泣き笑いしながら、わめき散らしている。

 

「できるさ。病魔の奴も私の勇気にビックリして

 

バンジージャンプした私の体にとどまっていられず

 

体から幽体離脱してそのまま川面へ叩きつけられ

 

撃沈してしまうかもしれないぞ。

 

どうだ?いい考えだろ?」

 

私の前には、突拍子もない私の考えに呆れ返り

 

笑い続け転げまわるほど喜びに満ち満ちたカミさんの姿があったのだった。

 

 

 

 

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