2020年04月26日

GHOST 第20話

 

「おい。起きろ。」

クロゼットの中で

うつらうつらしていた俺に向かって

急に誰かが話しかける。

ハッと我にかえる。

GHOST「誰だ。」

あたりを見回すが誰もいない。

暗いクロゼットの中にいるのは監禁されてる承と

その隣にまるで役目を果たしていない名ばかりの守護霊となっている俺のみ。

おかしい。今、確かに声がしたんだが・・・

もしや承の声?いや違う。今の声は承の声ではなかった。

かなり年配だった声のような気がする。

「そなた、そんなに我が子の前に目に見える形で姿を現したいのか?」

まただ。

どうやらクロゼットの外から声が聞こえてくるみたいだ。

クロゼットの扉は湿気防止のため

完全な一枚板になっておらず

扉の中央に縦一列に5本ばかりの柱が組み込んであり隙間が空いている。

俺はその隙間から外を確認してみる。

見慣れない西洋人のような長髪の老人が壁にもたれながら座っている。

風貌はというと一枚の大きな白い亜麻布を器用にも体に巻きつけ

片方の肩だけは巻かずにおもむろに見せつけるような感じにしてあり

もう片方の肩の上でピン止めして

下の方では一本の縄がウエストのあたりで締めつけてある。

GHOST「なんだ。あの格好。随分変わったファッションの老人が現れたものだ。」

俺はそれを見ながらクスッと笑ってしまう。

どう考えても現代人が着ているいで立ちとはかなりの差の開きがある。

GHOST「じいさん、どっからこの家に入ったの?

どうしたの?仙人みたいなヘンテコな服着て。

しかも縄で腰止めって。

死ぬ前に現世では母ちゃんにベルトの一つも買ってもらえなかったの?

まあ俺個人としてはそのワイルドさを高く評価するけどね。

どこかでこのあと仮装大会でもあるのかい?」

「じいさん!!!どの口が言っておる?なかなかそなた、初対面なのに失礼な奴よの。」

カチンときたようだ。

なんだよ。いきなり怒ってきたよ。気難しい頑固じいさんだな。俺は思う。

GHOST「まあいいじゃないの。固いことは抜き。

じいさん、あんたもどうせ俺と同じで不虜の事故にでも遭って成仏できず

魂がこの世の中でフワフワと浮遊して、さまってんだろ?

お互い苦労するよな?」

「ウォッホン。ワシはだな。そなたの言う・・・」

老人が話そうとしていた所に俺が割って入る。

GHOST「まあいいや。どうでもいいよ。そんなこと。

じいさんがどうして死んだかなんて俺には一切興味無いから。

どうせ今流行りのコロナにでもかかって死んじまったと

勝手に俺の中で解釈しとくからさ。

それにじいさん固いんだよな。

そなた・・・そなた・・・って。

冬のソナタじゃないんだから。

生前もそんな高貴な人が言ってるような言葉使ってたの?

かなり現世じゃ生きていくうえで色んな人達から気持ち悪がられただろ。

そうだろうな。浮世離れしすぎ。

近頃じゃそんな言い方してギリシャ神話に出てくるようなファッションしてる人見たことねえもん。

まあ折角こうしてこの世界でお互い話せる人間を前にしたんだから、

もうちょっとリラックスして話し合おうや。

俺たちは同じ境遇なんだ。

そんな毛嫌いせずお互いヨロシク頼むわ。」

「・・・」

無口になったところをみると老人は俺の飾らない言葉に腹を立てたようである。

GHOST「気悪くしたかい?気悪くしたなら謝る。ごめんな。じいさん。」

気を取り直して老人に尋ねてみる。

GHOST「ところで何?さっき言ってたけど、じいさん、俺の望み叶えてくれるの?」

「そうじゃよ。そなたは本当に我が子の前に姿を見せて現れたいのだな?どうじゃ?」

GHOST「じいさん、すごいね。地獄耳なんだ。

なぜそういったことで俺が悩んでいるって知ったの?」

「昨日、ワシに向けて言っていたではないか。」

GHOST「言うには言ってたけど、じいさんには直接言った覚えはないし・・・

わかった。そうか。

たぶん神様を通じて回り回って間接的に俺の言葉がじいさんの耳に入ったんだな。

そんなぁ・・・わざわざ俺のために老体にムチ打って、ここまで来てくれるなんて。

感謝。感謝。じいさんって優しい人なんだな。

段々こうして見てるとじいさんの顔が絵画で言うところの

「最後の晩餐」の中央にいる人そっくりに見えてきたよ。

ちょっとこっちの方がシワが多くて白髪も多い。

かなり身なりもお粗末で頼りない感じだし歳もとり過ぎだけどな・・・」

「悪いか。余計なお世話ではないか。さっきから大人しく聞いておれば、

あ~だこ~だと失礼なことばかり言いおってからに。

そなたちょっとうるさいんじゃよ。

もう少しだまっておれ。

それにしてもあの絵にワシが描かれているとよくわかったものじゃな。

よいか。歳は誰だってとるもんじゃ。

あれは若い頃のワシじゃ。

レオナルドの奴が1点透視図法という特殊な方法を用いてワシを書いてくれたんじゃ。

同じレオナルドでもディカプリオの若造の方ではないぞ。

しっかし・・・こんな小僧におちょくられるなんて・・・まったく。

ワシも落ちぶれたもんよ。」

GHOST「わっ、感じワルッ。俺を子供扱いして。」

「まあそんなことどうでもよい。

我が子の前に姿を現したいのかどうなのか?ワシは聞いておる。」

GHOST「そ、そうだよ。姿を現して承と話しがしたいんだ。」

いきなりのことで戸惑いを隠せないが

俺は素直に応じる。

「そのワシに向けてのタメ口どうにかならんかの。

何億という人間がこのワシを世界では崇拝してくれているのに・・・

そもそもワシの方がそなたより歳上なんじゃからして・・・」

GHOST「うぇ。じいさん上下関係には厳しいんだ。

見た目はひ弱そうなんだけど、じいさん案外と体育会系なんだね。

霊界にも上下関係があるなんて知らなかったよ。

まあいいか。俺の望みを叶えてくれるんだし・・・

あのぉ~

本当にワタクシの願い叶えてくださるんですか?」

「一つだけな。」

GHOST「なんだよ。ケチ!!」

「今、何か言ったか?」

GHOST「いえ、何も言ってません。」

「そなたの望みを一つだけ聞いてやろう。

それ以上は無理じゃぞ。

ワシも世界を股にかけて行動している忙しい身じゃからな。

このあとそなたの用事が済んだら、すぐイタリアに出張行かねばならんのじゃ。」

GHOST「忙しいんだな。まあいいじゃないの。歳をとっても必要とされるんだから。

ありがたいとおもわなきゃバチがあたるよ。

そんなことより承の目の前に現れるには、どうすればいいの?」

「またタメ口になっておる。そなた馴れ馴れしいんじゃ。

まあワシだから許してやるがの。

弟子たちの前でそんな言葉使いしてたらデコピンもんじゃぞ。

話が脱線したゆえ元に戻すと・・・

そなたの望みを叶えてやれる一番いい方法の一つは・・・

我が子の枕元に立つがよい。

これが一番簡単な方法だとワシは思うのじゃ。

もっともそなたの子はクロゼットの中にいるので枕元に立てる状況ではない。

このままにしておいてはあまりにも可哀そうだと思い、そなたの願いを叶えるようにしたんじゃ。

ただしこれには条件がある。

ポルターガイストのようにものを動かすというのは厳禁。

もっともこれは現世で超能力を身につけていなかったら出来ない技なんじゃがな。

スプーン曲げ一つも出来ないそなたじゃ逆立ちしても無理じゃ。」

GHOST「だったら、ポルターガイストなんて言うなよ。」

「今、何か言ったか?」

「いえ、何も言ってません。」

「我が子の前で姿を現して言葉を発するのみじゃ。

それも言葉を発せられるのはたったの一回のみ・・・

よいか。一回のみじゃぞ。

それ以上言葉を発すれば己が自然と現世から姿が消えてしまうからな。

それに。

我が子を前にした時に心を乱してはいかぬ。

冷静沈着にして節度ある態度を保持することが必要となるからの。

平常心を保って常にポーカーフェイスで一言だけ我が子に向かって言うがよい。

その一言だが文字数にして10文字以内。」

GHOST[なかなか細かいな。]

俺は小声でつぶやく。

「今、何か言ったか?」

GHOST「いえ、何も言ってません。」

「幻聴かの。歳をとると耳が遠くなっていかん。

中には原稿用紙1枚分言う者もおるが

そうなった場合

即、話している途中でアウトにするからの。

それらを守ることができるなら、ことを成すがよい。

時刻は今日の・・・そうだな。丑三つ時がよいな。

そなたのような浮遊した霊が出やすい状況がそろっておるからの。

それにこの時間帯は、とくに輝かしい後光が射しやすいんじゃ。

よいな。しかと約束は守るのじゃぞ。わかったな?」

GHOST「わかりました。ありゃーす。」

「そなた、ふざけておるのか?

ふざけている者には慈悲をいっさい与えたりしないからな。」

GHOST「いや、失礼しました。決してふざけてなどいません。すみません。」

「では頼んだぞ。」

GHOST「あ、あの・・・最後にひとつだけ聞いてもよろしいでしょうか?」

「なんじゃ?」

GHOST「句読点含めて10文字ですか?それとも含めなくて・・・?」

と言った瞬間、スッと老人は煙と共に消えて

「アホか。」と去り際に小声で言った言葉を最後に

そのあと一切何も起こらなくなり

声も2度と聞くことはなかった。

まことにもって変なじいさんだった・・・

 

つづく

オバケ

 

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