2020年04月23日

GHOST 第19話

 

夜は段々と更けていく。

「おとうちゃ、さみしい

薄暗いクロゼットの中で承は独り呟く。

「おとうちゃ。あいたい・・・」

俺も承の唯一の形見であった腕時計を

吉田の強引な行ないによって失くしてしまったことに

いたたまれず承の隣で共にシクシク泣いていた。

GHOST「ご、ごめんな。承。

こんな狭い暗闇に独りにさせて。

救ってやりたいがおとうちゃんにはそれができないんだ。

どうすることもできない。

お父ちゃんが死にさえしなかったらこんなことにはならなかったのに。

自然と涙腺が緩み次から次へと止めどなく涙が出てくる。

お父ちゃんだってまだ死にたくはなかった。

これからもずっと承と一緒に居たかった。

ずっとずっと承と一緒に居られると思ってた。

承が大きくなって

一緒にキャッチボールできるのを夢見ていたりしたんだ。

でももう叶わない夢に終わってしまった。

あえなくおとうちゃんは死んだことによりゲームセット。

でも承はこれから生きていく上で若いんだ。

人生ゲームは始まったばかりで

プレーしていく上で未来を築いていけるチャンスはある。

ただ・・・

あんな冷酷非道な奴にさえ遭わなかったら・・・

吉田に遭ったことにより承の大切な人生の岐路を・・・

ゲーム上でいうなら

スタート地点でマス目を5マスも10マスも戻らされてしまったことになる。

まだ2歳になったばかりの子供にこんな辛い事が待ち構えているなんて。

おとうちゃんはあいつを絶対許さない。

あいつは人間の皮を被った悪魔だ。」

俺は、たまらず拳を強くギュッと握る。

「物質化できてアイツの前に化けて出ていけるのなら

今すぐにでもアイツを呪い殺してやりたいくらいだ。

承、辛いだろうな。

こうして独り小さな体で戦っていること・・・

どれほど大変なことか。

想像を絶する恐怖と寂しさが

お前を襲っているんだろうな。

お父ちゃんはこうしてお前とは違った異空間に

存在していて何もしてやれない。

承が虐待に遭っているのに見ていることしか出来ないでいる。

一番辛い。親としてそれは拷問に等しいものがある。

こんなに身近にいるのに守ってやれないなんて・・・

おとうちゃんは失格だな。

こんなことになるのなら数千ボルトの電流が流れているので

さわるなと言われて感電した方がまだまし。

目の前にいるのに感触すら感じないなんて・・・

こんなことあるか。

承。お父ちゃんは

いつもお前のこと思っている。

決して見離した訳じゃないんだ。

承、お父ちゃんの声聞こえるか?

ふぅ~。やはり承には聞こえてないか。残念でしかたない。

俺がここにこんなにも近くにいるのに。

なぜ承に言葉を伝えることが出来ないんだ。

触れることさえもできない。

神様、ほんの少しでもいい。

ほんの少しでもいいから

俺の気持ちを承に伝えてやってくれ。

すべての人が悪魔に見えたとしても、

おとうちゃんだけは承を見捨てたりはしない。

おとうちゃんはいつも承のそばにいていつも承を見守っているんだと。

神様、頼む。頼むから・・・」

俺は泣き崩れる。

尚も俺は今まで耐え忍んできた言葉が次から次へと出てくる。

「神様、俺なんかどうなってもいいんだ。

死を受け入れた以上、これよりも悪くなりようがない。

どんな天罰でも受けてやる・・・

俺を地獄に突き落とすなら突き落としてくれ。

好きにやってくれていい。

そのかわり承だけは何としてでも俺が守ってやりたいんだ。

こんな宙ぶらりんな状態で虐待されてる承を見ているなんて・・・

耐えられない・・・耐えていられる方がおかしい。

でも神様、あなたはこう言うかもしれないな。

そうやってそばに居られるだけでもありがたいと思えと・・・

そうか。俺の今していることっていったら

承の守護霊になっているわけだ。

神様の計らいで守護霊にさせてもらってるってこと。

だからそれ以上の贅沢は言うな。

それでお前は充分だろ。我慢しろ。

神様、そう俺に言いたいのか?

近くにいられるということが何よりも幸せなんだということを・・・」

確かにそうかもしれない。

「でも神様。じゃあ聞くが

もし俺が今、俗に言われる守護霊になっているとするなら

そばにいて見ているだけ。何もしてやれない。

何も守ってやれない。何も言葉に出して言ってやれない。

何の運命も変えてやれない。

デクの棒のようにただただジッと承の隣に立って

馬鹿みたいに我が子を見ているだけ・・・

こんな飾りだけの存在が守護霊と言えるのか?

虐待されているのを近くで見ているだけの守護霊なんて・・・

いったい何を守っていると言うんだ。

なにも守ってやれていないじゃないか。

これがあなたの言う守護霊の本当の姿なのか?

守護霊って困っている子孫の背後にとりついて

救ってやれるほどの有り難い存在じゃないのか?

こんなこと・・・とても耐えられない。

今、俺のしていることが守護霊の役割だなんて・・・

これじゃあ役立たずの守護霊じゃないか。

俺にとっては嫌がらせもいいところだ。

神様、そうじゃなくて俺に本当の力を与えてくれ。

承を本当に守ってやれることのできる力を・・・

承は・・・これから先の希望がある。

承は虐待に遭いながらも今必死になって生きようとしているんだ。

その分だけでも俺の守護霊としての力を発揮して幸せにさせてやりたい。

こんな2歳の小さい体で虐待に遭ってでも我慢して耐えているんだ。

努力やら試練は人それぞれ用意されてるとするならば

幸せは誰にだってつかめるものじゃないのか?

神様、これが本当の試練だとするなら、

なぜ産まれてから今に至るまで

業を積んだことすらしたことのない

こんな幼い子供にまで

これほどの試練を与えようとするんだ。

まるで生き地獄じゃないか。

承はまだ2歳なんだ。

人生ゲームが始まったばかりで、

ゲーム本来の楽しさというものをまだ知らないでいる。

これ以上苦痛を与えて苦しめないでやってくれ。

1度でもいいから承を幸せにさせてやって笑顔にしてやりたいんだ。

そのかわりこの俺がどんな罪でも受ける。

俺を罰してくれ。」

俺は泣き崩れながら必死になって神様に懇願する。

必死になって祈る。必死になって叫ぶ。

でも何も通じない。

漆黒の闇夜の世界が音も無くシンと静まり返り存在するだけ。

俺はとうとう禁断の言葉を口にする。

涙ながらに・・・

「承、こんなことになるのなら

お父ちゃんと一緒に電車に轢かれて死ねば良かったな。

ごめんよ。承。

もっと色んな思い出を作ってあげたかった。

今となっては図書館に一緒に行っていた記憶だけが痛烈な思い出しかない。

2年間という期間は短すぎる。

神様、あなたはどう思うか知らないが

承は、これっぽちの物しか幸せというものを

手にしたことがないんだ。

それなのに尚もいばらの道を歩かせるなんてあんまりだ。

世の中にはもっともっと幸せな生活をして

暮らしている子もいるじゃないか。

うちの承にだって

ごく普通で元気いっぱいの2歳の男の子らしく

笑いの絶えない暮らしをさせてやりたいんだ。

どうしてあなたはここまで差別をお与えになるのか・・・

こんなことなら承を早く楽にしてやってくれ。

じゃなかったらあの吉田という悪党を地獄に突き落としてやってくれ。」

暗闇の中で叫ぼうとも誰も何も反応しない。

俺だけが空しく独り叫んで空回りしている。

こんなどっちつかずの魂がさまよっている人間には

これっぽっちの感情さえも神様には届かないのか。

月が冷えた地面を照らしている・・・

「ごめんな。承。

お父ちゃんだけが先に逝ってしまって。」

枯れる事のない涌き出る泉のように

次から次へと涙が出てくるのだった。

 

 

 

つづく

obake

 

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