2020年02月25日

世直しドクター オレオレ詐欺編 第8話

 

「ちょっとアニキぃ~何も今トイレに行かなくても。」

受け子の男は部屋に独りにさせられたことに不安を隠せずオロオロしている。

群れを成せば意気がる受け子も一人になれば実際は

てんで話にならない寂しがり屋であり怖がり屋の僕ちゃんのようである。

「お前、孝って名前なんだな。」

「悪いか。」

見た目からしてかなり若い。大学生といったところである。

バイト料をはずんでやるからと調子のいいこと言われ

巻き添えにされたに違いない。

部屋に残されたのは受け子をやらされている孝という名のこの男と俺、

そしていまだ意識が戻らない奥さんのみとなる。

そんな時

「プルルルルルルン。」

孝の持っているスマホが鳴りだす。

「もしもし、あっ、かあちゃん。ちょっと待っていてくれ。

もう少ししたら金が入るんだ。そしたら手術できるから・・・」

俺に知られたくないのかすばやく電話をきる。

すぐさま何もなかったように俺を見て

話題をすり替える目的で話し始める。

「さっきから横で聞いてれば

うちのアニキ達にテキトーなことばかり言いやがって。

アニキがあんたの言うこと信じる訳ないだろ。

あんたは他人のことばかり気にしてっけど

いまあんたは自分がどういった立場に置かれてるのか考えたほうがいい。

マジやばいのわかってるか?

明日になればあんたは海の底で魚のエサになってるかもしれないんだぜ。

それをあんたはあーだのこーだのとアニキ達に言ってけど。

余計なことばかり言わないほうが身のためだ。

俺にはあんたの言ってることが負け犬の遠吠えにしか聞こえないし。

そんな暇あったら自分の命乞いでもしてるべきだ。」

よく言えたものだ。まるで学芸会だな。その頑張りように少し笑える。

なんとか人を脅すギリギリのラインまできていたと評価すべきか・・・

俺に弱いところを見せまいと必死になっている姿が露骨になる。

俺の話していた言葉にこのままではアニキ達の気持ちが揺らぐかもしれない・・・

そうなればこの組織は解散になると思ったのか

耐えかねて俺に対しカラ元気を出したようだ。

そんなことじゃ俺を倒せない。

コイツには俺を説得するなんてこと永遠に無理だ。

その代わり俺がコイツを操ってやる。

あとひとひねりして俺が威圧的な態度で圧力を加えれば

こいつは俺に従うか最悪頭がおかしくなってここから逃げだすかもしれない。

こいつを真人間にさせるにはその方法しかない。

おれはとっさに判断する。

「ほんとにそう思うか?」

「な、な、何がだよ?」俺の改まった低い声に孝は動揺を隠せずビビっている。

「ちょっとこっち来い。」

「な、なんなんだよ。」

孝はソファーから立ちあがり俺の命令に従って

近くまでおぼつかない感じで歩み寄ってくる。

先生に怒られる直前の生徒のように

ブルブルふるえながら辛うじて自分の足で立っているという有様である。

本当は度胸もない臆病者なのだ。

「ほんとにお前のアニキ達が俺の言うことを信じないと思うか?

そしてお前といつまでもこのままこうしてつるんでいると思うか?

アホなお前には、まだわかってないようだから俺が代わりに説明してやる。

一番警察に捕まる確率の高いのは

お前らのような受け子やかけ子の実行犯なんだぞ。

もし親玉が警察に捕まった時に知らぬ存ぜぬ

そんなこと俺は一切指示した覚えはないと言ったら、

お前いったいどうするよ?」

「そ、そ、そんなことあるもんか。」

「いいか。考えてもみろ。

電話をかけてるのはどいつだ?

金を受け取っているのはどいつだ?

警察が捕まえるのは?

ゆっくりと上の方であぐらをかいている親玉ではなく

現場で忙しく電話をかけているかけ子だったり

金をじかにお年寄りから受け取っている受け子のお前らなんだぞ。

お前なんかどうせ親玉からしてみたら将棋でいうところの捨て駒に過ぎない。

利用するだけのただの便利な脳なしとしか見てないんだ。

そうだな~。警察もアジトに踏み込まない限り

かけ子の現行犯逮捕は難しいとして・・・

と言うことはつまり

かけ子よりも受け子のお前の方が現行犯で捕まえやすいという点から見て

警察は真っ先にお前に目をつけるだろうな。」

「う、嘘だ。」

「嘘なもんか。

警察が動いて捜査にでも入ってみろ。

お前なんかかわいそうなもんだ。

仮に現行犯で捕まえられなくてお前が逃げきれたとしても

警察は防犯カメラなどからしっかりと足取りを掴んでいて

いずれお前をかならずマークするに決まっている。

被害に遭ったお年寄りにお前の顔写真見せて

金を受け取りに来たのはこの男ではなかったですか?と尋ねられたとしたら・・・

尋ねられたお年寄りはきっとこう応えるだろうよ。

受け取りに来たのは確かにこの人でした。と・・・

そしてお前は言い逃れも出来ずブタ箱入り確定というわけだ。」

受け子の男、孝は、このオレオレ詐欺のことを今まで深刻に考えてなかったようである。

これを聞いて

今にもちびりそうな怯えようで全身ブルブル激しく震わせ視線を一点に見つめるでなしに

あっちこっちと様々な方向へ向け目線が定まらずにいる。

じつにこの若者は遊び気分でここに就職したはいいが

上から言われたままを実行して

都合のいいように丸めこまれている従順な受け子のおぼっちゃんなのだということがよくわかる。

この業界は受け子の実態というものは学生である傍ら割のいいアルバイトがあると聞いて

罠にはまりにくるここにいる孝のような本当は心の優しい人間がほとんどなのかもしれない。

警察に捕まって初めてことの重大さに気付き

自分の一生を棒に振ってしまった現実にその時になってようやく気付くのである。

「そんなことになればお前のかあちゃん泣くぞ。

手術する金が無いんだろ?お前が刑務所に入っている間に死ぬかもしれねえな。」

孝は一瞬、なぜ知っているんだというような驚きの表情を見せ思わず息を飲む。

いいか。俺の言ったことよく覚えとけ。

出汁だけ取ったらお前なんかリーダーから見放されてすぐポイよ。

お前が捕まろうが何されようがお構いなし。

それくらいにしかお前は思われていない。

明日になればまた違う使えそうな馬鹿を求人探しで探しているに決まってるさ。

どのみち近いうちにこのアジトも調べられて

お前らは一網打尽になってると思うがな。

いいか。人生お先真っ暗になる前に早く足を洗え。

お前には他にもっと合った仕事というものが必ずある。

もし俺だったら使えねえお前よりもフリスビー咥えて戻って来る犬ころの方が

まだ可愛げがあって従順で扱いやすいし愛着持って接するがな。

親玉もきっと同じこと思ってると思うぜ。」

最後の一言はちょっとコイツにはキツイかなとも思ったのだが

ここまで言わないとコイツは改心しないだろうと踏んでの俺の言動だった。

つづく

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