2020年02月07日

世直しドクター オレオレ詐欺編 第4話

 

眠そうにしている赤ん坊をひとまずベッドに寝かしつけ

静かになったところで俺に小声で言う。

「ここです。この部屋なんです。」

家に到着した俺は中へと通され

男たちが籠もっているという部屋の前へと案内されていた。

そっと近づいていってドアに耳をあてて聞いてみる。

たしかに今まさに話し声はするが何を話しているのか

詳細までは聞きとれない。

言えることは誰かに話しかけているということのみ。

この扉はかなり頑丈な作りになっていて

隙間は何かで塞がれ

あまり音が外に漏れないような構造になっている。

そんな時である。

「カチッ」

ドアにつけてある鍵がはずれる音。

「ギィーーー。」

そしてドアがゆっくりと開かれる。

急いで俺たちは扉の背後に身を隠す。

一人の男が出て来てトイレの方向へと歩いていくようだ。

その間、扉は開いたまま。

チャンス。今だ。

音をさせず奥さんと一緒に忍び足で部屋の中に入ってみる。

事務机が3台置かれている。

机の上には1万円の札束が乱雑に積み重ねてあり

他にはポテトチップスの食べかけの袋、

タバコの吸い殻で一杯になった灰皿、

コーラの飲みかけの瓶、

ビールの空き缶など

雑然と色んな物がひしめきあって生活感を漂わせている。

配置としては入り口の対面に大きな窓があり

それに並列に2台の事務机が向かい合うように置いてあって

窓と向かい合う形で2台の事務机の横に1台。

他のものより大きめの事務机が配置されている。

壁に沿わせるように3つのソファがそれぞれにあり

そこで疲れた時などに男たちが

それぞれ仮眠をとるような配置になっているのが

一目瞭然でわかった。

窓に面した部屋の角には

中陰台が置かれその上に小さな桐の箱が置かれていた。

全体的にこの部屋はかなり余計なものを、そぎ落としたシンプルなものになっている。

部屋の大きさからして23~25畳といったところだろうか

一つの部屋にしては十分過ぎるほどのスペースがあり

全体を通してゆったりとした空間が部屋中に広がっていた。

その中の1台つまり若干大きめの机に

1人の男がこちらに背中を向ける形で座っている。

どうやら今この部屋にはこの男一人のようだ。

椅子にもたれながら男の両足は

ごみ化したさまざまな物をよけるように

窓へと向かう形で机の上に乱暴に投げ出され

携帯電話を耳にあてタバコを吸いながら

リラックスして通話相手と話すのに夢中になっている。

背中を向けているので俺達の存在には全然気付いていない。

「・・・それでさあ。おばあちゃん。あと500万円でいいから用意しておいてくれないかな。

もうこれが最後だから。これ以上請求されるってことはないと思うから。

頼むよ。俺にはおばあちゃんだけが頼りなんだよ。

かわいい孫のためだと思って。頼む。このとおり。

じゃないと俺今まで勤めていた会社をクビになってしまうんだ。」

「やっぱりそうか。」俺の思ったとおりだった。

短期間のうちにこれだけの家に住めるまでになるには

それ相当の収入が得られる仕事を成り立たせなくてはいけない。

こいつらオレオレ詐欺を生業として短期間に莫大な収入を得ていたんだ。

「そう?用意してくれるの?ありがとう。

あとで500万円取りに行くから。

と言っても俺、今足を怪我しててギプスはめているから外には出られなくてね・・・

それに500万円耳を揃えて払うまでは解放してくれなくて・・・

実は今怖い人達に監禁されてんだ。

違う人におばあちゃんの家まで取りに行ってもらうから・・・」

通話相手に対して不真面目な態度で嘘八百を並べたて

気楽に話しをしている男の様子を目の当たりにして

俺は怒りの感情が抑えることができなくなっていた。

無性に腹が立ってくるのがわかる。

こいつらにオレオレ詐欺を絶対止めさせないと

俺が此処に来た意味がなくなってしまう。

男は時たま笑い声を交えながら話しに夢中になっている。

俺は男の背後に気付かれないようにスゥ――ッと立ち、

話し中の男から携帯電話を強引に奪い取っていた。

男は突然、背後から伸びてきた手にびっくりしたらしく

「おぉ!!!」

と驚きの声をバランスを崩しながら発する。

「おばあちゃん、騙されたら駄目だ。今言ったことは真っ赤な嘘だから。

今話しをしていた奴はお婆ちゃんの孫でもなんでもない。

全くの垢の他人なんだ。

騙そうとしてやったことだから。」

と一方的に俺は相手へ向け早口で言ってしまうと

折りたたみの携帯電話を逆方向へと

力任せに折りたたむ。

「バキッ!!」

鈍い音とともに待ち受け画面が真っ暗になる。

「何するんだ。お前。俺の商売道具を。」

男は急に現れた俺の存在にあっけにとられ酷く驚いている。

「お前いったい誰だ。俺の家にどうやって入った?」

矢継ぎ早に次から次へと質問が飛んでくる。

「俺か?俺はお前らのような屑どもを成敗するためにやってきた

通りすがりの・・・

そうだな。言ってみりゃ世直し請負人ってところかな。」

「ふざけたこと言ってやがる。」

男は態勢を整え立ち上がろうとしたが椅子が滑って

バランスを崩し床に背中を打ち付ける形で体ごと落ちていった。

ガシャン!!

「いてぇ。」

椅子が倒れる大きな音のあとに男の痛がる姿があらわとなる。

「誰だ。お前。」

トイレに行っていた男が大きな音がしたことに驚いて戻ってくると俺に向け怒鳴った。

床に倒れた男に気付くと慌てて近寄って体を起こしにかかる。

「大丈夫っすか。アニキ。てめえ。アニキになんてことを。」

「悪党どもにも清らかな人情愛ってものがあるんだな。笑わせやがる。」

「何を。てめえ。」

倒れた男を起きあげると男は突然俺に向け殴りかかってくる。

俺は横に体をスライドして軽く避けると

男に右ストレートを繰り出し、それがヒットすると

男の腹の中心めがけ膝蹴りをあびせ

ひるんで前傾姿勢になっている隙に背中めがけ

両手をガッチリ結んだ拳を振りおろしていた。

「ううっ。」

崩れるように倒れていった男はそのまま気を失ってしまう。

「野郎。俺の大切な後輩を、よくもかわいがってくれたな。」

そう言うと床に倒れていた男は急いで立ち上がり戦う構えに入る。

「あなた。やめて。この人は私が連れてきたの。」

俺の背後で声がする。

今まで189cmある俺の背後で隠れるようにしていた

奥さんが姿を見せると堪らず夫に向け言い寄る。

「あゆみ。やっぱりお前がこれを仕組んでいたのか。いったいどういうつもりだ。」

どうやらこの男が亭主らしい。

「どうもこうもねえよ。奥さんはお前が変なことをしてねえか

心配になって俺のところに相談にしに来たんだ。

そしたら案の定、

とても世間には顔向け出来ねえロクでもねえようなことをお前らはしてたという訳だ。」

「これのどこが悪いんだ。

俺はな。こいつらをちゃんと養うために一生懸命働いてきたんだ。」

開き直るように男は言い返す。

「はあ?今お前、オレオレ詐欺のことを言ったんだよな?

そんなくだらねえことにプライドを持ってる奴を初めて見たぜ。

悪どいことをしてきた奴がそんな風に自信持って威張り散らすな。

馬鹿か。お前は。

そんなのちっとも一生懸命働いてきたことにはならねえんだよ。

一生懸命と言う言葉はな。汗水垂らしてきた人が使う言葉だ。

お前らみたいに人を騙してきた人間が使う言葉じゃねえ。」

「あなた・・・私に今まで黙ってそんな悪いことしてたの?」

悲しそうな目をして自分の亭主に向かって言う。

「お前そんなんでこの先、本当の幸せが掴めると本気で思ってんのか?」

今の俺にはとても感情を抑えることなど出来ず、思いつくまま怒鳴っていた。

「うるせえ。余計なお世話だ。お前の心配することじゃねえだろうが。」

「お前らのような悪党がこの世にのさばっている以上、

根絶させようとするなら

俺みたいなおせっかいな人間がどうしても必要になってくるんだ。

お前らのあぶく銭欲しさの為にどれだけのお年寄りが犠牲になってると思ってんだ。

俺はお前らのようないい加減な目的で

弱い人間から簡単に金をだまし取って世にのさばってる悪党たちが

一番許せない。むかつくんだよ。」

突然

俺の横を誰かが通り過ぎたか?と思った瞬間、

「パシンッ。」

平手で男の横面を強く引っぱたいたかと思うと小気味よい音が部屋中に響き渡っていた。

「あゆみ、お前、何しやがる。」

「そんな薄汚れた金で私達が喜ぶとでも思ったの?

人をだました金で何かしてくれっていつ私が頼んだ?

そんなことをしてお金を作ってくれたってちっとも私は嬉しくない。」

「あゆみ・・・」

「あの子と2人、いったいあなたは私達の将来のことを真剣に考えてくれたことあるの?」

「あるさ。あるからこそ

危ない橋を渡りながらもお前達のためにこうして金を稼いでいるんじゃないか。」

「いえ。全然考えていないわ。あなたは全然私達のことなど考えていない。

いつもあなたは自分のことばかり・・・

だってそうでしょ?

もしあなたが警察につかまって

刑務所に入れられたら私達はこの先どのようにして暮していったらいいの?

そこまで考えたことあるの?」

「だから何回も言うが俺は捕まらないようになんとか工夫して・・・」

「そんな保証どこにあるっていうの?

いつもいつもヒヤヒヤしながら働くことで

私達をこの先もずっと養っていけるっていう自信はあなたにはあるの?

そしてこれからも私はそんなあなたを捕まらないように必死になって祈って

表舞台から隠れて社会から後ろ指差され

ビクビクしながらこの子と2人暮らしていくことしかできないの?」

奥さんは涙ながらに必死になって旦那にむけて訴えかけていた。

その時、突然・・・

俺の後頭部に猛烈な痛みが走ったかと思うと

急に目の前が真っ暗となり

俺はそのまま暗闇の世界へと堕ちていった。

薄れゆく意識の中で俺が見たもの・・・

それはバットを持って俺を殴ったとされる3人目の男だった。

つづく

 

mig

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