2020年02月01日

世直しドクター オレオレ詐欺編 第2話

いそいでこの病院から出ようとした時である。

受付で何やら揉めているような声が・・・

「そういったことはこちらに来て頂いても困ります。警察に行って頂かないと。」

受付の女性事務員の声。彼女の前には20代いや10代後半といったところだろうか?

若い女性が赤ん坊を抱きながら言い争っている姿が。

近づいていって事務員に声をかける。

「どうかしたんですか?稲垣さん。」

「あっ。先生。いや、この人がね。

最近、旦那さんの様子がおかしいって言うんですよ。まったく困った話しです。」

「ん?患者さんが困っているなら話しを聞いてあげないと。」

「それがちがうんですよ。先生。」

「ちがうといいますと?どうちがうんですか?」

赤ん坊抱いた女性が俺の存在に気付くと

「先生ですか?助けてください。うちの主人の様子がどう考えてもおかしいんです。」

「ん?どこか痛がってみえるのですか?詳しくお話し下さい。」と俺が言う。

「先生。相手にしないでください。

この人の言ってることは病気の類ではないんです。こういうことは警察が・・・」

と事務員。

「だって警察に言っても事件が起きないと動いてくれないじゃないですか。

それにもう私には警察は呼べなくなっているし・・・」

女性がむきになって事務員につっかかる。

「あなたねえ。だからと言って病院に来ることはないでしょ。場所をわきまえなさい。

病院は病気を治すところですよ。その辺のところをよくわきまえてくれないと・・・

どんな人でも来ていいとは限らないんです。それに・・・」

事務員が続けて言おうとするのだが俺が手で抑え遮(さえぎ)る。

「いいから気にせず私に話してみてください。」

「先生・・・」事務員ががっかりした様子になり不満気にしている。

「家の一室を借りて朝の9時から夜10時くらいまでなんですが、主人を含め

3人の男の人が・・・といっても主人以外の2人の男の人は主人の昔からの後輩なんですが

部屋の中で何かをやっているようなんです。」

「と言いますと?」

「最近は部屋に鍵をして私には決して中には入れてくれないんです。

朝から晩になるまで部屋にこもりっきりで。」

「食事はどうしているんです?」

「私が最初のうちは届けてはいたんですが、

おいおい話しますがとても心配になり私が警察に通報してしまってから

絶対、私には一歩たりとも部屋には入れてくれなくなり

今では近くのコンビニに行って3人が交代で食事を買ってきています。

なにをやっているの?と聞いても、お前には関係ないと言うだけで全く相手にしてくれず。

唯一、それぞれがトイレに行く時以外、部屋にこもったままで。

ずっと3人一緒なんですよ。

そのうちの一人の人は時々外出してどこかに行ってるみたいですが

それでも30分もしたらまたすぐ戻ってきて部屋の中に閉じこもっているんです。

全く何をしているのか?私にはわからず・・・」

「そんなのどこにでもあるでしょ。男の人が2,3人集まることぐらい。

退屈してるんですよ。

仲間と集まることによってストレス発散に何かとなるし騒ぎたくもなるもんです。

そのストレスを貯める原因はいったいどこから来てるのか知りませんがね・・・

麻雀でもやってんじゃないですか?麻雀だって少なくとも3人は必要なんだから。

ちょっと心配しすぎじゃないですか?あなた。子供じゃあるまいし。」

事務員が呆れながら女性に嫌みったらしく言う。

「麻雀では絶対ないです。だって牌を混ぜる時のジャラジャラという音が聞こえてきませんし、

日中からいつも部屋にいるのに、どうしてあんなにお金があるのか・・・?」

「と言いますと?」

「私、見てしまったんです。さっき最初の頃は私が部屋へ食事を届けていたと

言いましたが、

その時に机の上に無造作に帯に巻かれた一万円札の束がいくつも積み上げられていたのを。」

「ドラッグという線はないですか?売人をやってるとか。」

俺は思いつくなり言いながら女性の両腕を何気なく見る。注射痕はないようだ。

「いえ。違います。それはないです。」

「どうしてそう言えるんですか?」

「私も同じことを考え、もしかしたらドラッグに手を出してるのかも?と考えてみたんです。

心配になりそのことを警察に話し、助けてもらいたくて通報しました。

ドラッグに手を染めているようであれば

とても私の力ではどうにもならないところまできていると思いましたので。

もしそうならしっかりしたところで更生させないといけないということは知っていましたから。

そこで見兼ねて1ヶ月前になりますが警察の方が家まで来てくれて

主人達の部屋の中にある所持品を調べ頭髪のサンプルまで採取して検査してくれたんです。」

「そしたら?」

「何も出ず。陰性でした。今思えばそれが私の軽率な行動だったかもしれません。

主人を心配するあまり悪い仲間から引き離したくて警察に通報したりして。

そういえば、後から思い出したことなんですが

うちの夫はドラッグやら覚せい剤についてはすごく抵抗ある人でして

以前一回だけやった時にすごく拒絶反応を起こしたことがあったんです。

懲りもせずまた手をつけたのかと私はその時は疑いましたが

警察の方が新たに調べて頂いたとおり

何も使っていなかったという証拠が出た以上

あのたったの人生最初で最後の一回で、主人はドラッグを本当に止めていたんだと思います。

ましてや売人としてそれを取り扱うことなど絶対するはずないと・・・

私が主人をもう少し信用してあげていればよかったのですが。」

かえって自分達が疑われたことで

主人達はすごく怒こり警察を名誉棄損で訴えるってことにまでなってしまって。

でもその時に私が必死になって主人達に「それだけは止めて。」と謝ったものですから、

なんとかそれはくい止めてくれたんです。

ただ・・・」

「ただ?」

「私が一番気になるのは頻繁に色んなところに電話してるみたいなんです。

一人の男の人の声がひっきりなしに誰かに話しているように聞こえ・・・

かと思うと主人の声が時々聞こえてきて電話に変わってみたり、

最後はもう一人の人に変わってみたりと

次々と話す人を変えていたりもするんです。」

「何を話しているのかわかります?」

「いいえ。そこまでは・・・壁一枚挟んでいるものですから

詳しいことまではよく聞こえないんです。」

「そのことは警察に話しました?」

「当時ドラッグをやっているという考えが先に立って

警察の方に話すのにそこまで頭がまわらなかったものですから話していません。」

「そうですか・・・」

「私このままじゃ怖いんです。

主人が何かドラッグではない悪い事に段々と手を出していくような気がして。

この前の一件以来、警察に相談しに行っても「大丈夫」と言うだけで

出向いてもくれないし私を「またか」という感じで全然相手にしてくれなくなりました。

私・・・この先どうしたらいいか?わからなくなってしまって・・・」

女性はオロオロしながら視線を泳がすと顔を塞ぎ泣き始めた。

事務員は迷惑そうに「早く出て行ってくれないかしら。こんなことに私達を巻き込むなんて。」

と言わんばかりに渋い顔になっている。

おれにはピンとくるものがあった。このままにはしておけない。

「とにかくここはそんなお悩み相談といった窓口ではありませんからね。どこか違うところへ・・・」

と事務員が言った途中で俺が

「わかりました。私が今からお宅に伺いましょう。案内してもらえますか?」

隣りで聞いていた事務員の目がびっくりしたらしく一段と大きくなったかと思うと俺に向け

「先生。駄目ですよ。そんなことしたら・・・

いちいち相手になってこんな人につきあっていたら、いくつ体があっても足りません。

ここはれっきとした総合病院なんですから。だいいち私達は、なんでも屋ではないんです。

警察に任せておけばいいんです。そういったことは。

警察が何もやってくれないのなら私達はそれよりもっとこの人に関して言えば部外者なんですよ。

当直明けで先生お疲れでしょうから、早くご自宅に戻り就寝なさって下さい。

ここはもういいですから。私がなんとかしますので。」

「こういうの見ると私はほっとけないんです。

これは私ひとりが引き受けますから。

だったら問題ないでしょ?

決して病院には迷惑かけたりしませんから。

ただしこのことを病院の方達には黙っておいてくださいね。

私と稲垣さんだけの秘密ということにして。」

「ありがとうございます。先生。」

俺の言葉を聞くなり赤ん坊抱いた女性の顔が急に一気に喜びにあふれる。

「何を言っているんですか。あなたは。調子にのっているんじゃありません。

先生は冗談で、おっしゃっているんであって・・・」

事務員がまっすぐ女性を見て諭すように言うが・・・

「じゃあ行きましょうか。」と俺が言うと

「あの・・・ちょっと先生。待ってください・・・

それにあなた・・・診察券お忘れですよ。

ちょっとあなた。それに先生まで・・・

先生、変なことに首を突っ込まないでください。

先生・・・悪いこと言いませんから戻ってきてください。あとでどうなっても私は知りませんよ。

ちょっと先生ったら。もう・・・」

事務員の引き止める声を背中で受け止め

俺はその女性とともに男達がいるという家へと向かったのであった。

つづく

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