2020年01月24日

世直しドクター オレオレ詐欺編 第1話

 

ピピピ。ピピピ。

 

めざまし時計のアラーム音が時を知らせる。

 

ようやく深い眠りに入りそうなところだったのに・・・

 

体は最悪と言っていいほど気だるいし

 

頭は全然すっきりせず思うようには起きてくれない。

 

今が一番起こして貰いたくない時なのだが

 

めざまし時計の野郎はそんなことお構い無く

 

音域を徐々に増大し音の間隔を限りなく短くしながら

 

意地悪にも俺を虐待しにかかる。

 

「あ~ぁ」

 

大きなあくびをする。

 

音がしているのはわかっているのだが

 

どうしても手を伸ばして止めるといった行為すら

 

めんどくさく感じてしまい

 

しばらくの間

 

めざまし時計が最大限我が身をまっとうするように

 

そのままの状態にして遊ばせてやることにする。

 

気持ち的に騒がしさにイラついているのは自分でもわかる。

 

でもここでいつもどおりに時計を止めてしまうと俺の負けだ。

 

時計のおもいどおりに従ってしまうのは俺にとって納得がいかない。

 

たまには反抗してやるんだ。いつも甘い顔すると付けあがるから。

 

じゃないとまるで俺が音を止めるしか脳のない奴隷のようではないか。

 

変な理論のもと今朝の俺は成り立っている。別に酒に酔っている訳ではない。

 

当直の時に酒を飲むなんて御法度である。

 

寝不足が考えを鈍らせるから誰に迷惑かけるでもなしに

 

逆らっているんだということをわかってほしい。

 

「うう~」

 

再度うめき声。体のどこも悪いといったところは無いのだが

 

そうやって発声すること自体が俺にとって

 

(さあ、頑張って起きてやるぞ。)

 

という気合いをいれるための充電ともいえる。

 

心配しなくても気持ちはちゃんと前向きなのだ。

 

薄目を開け、目の玉だけ動かし流し目になりながら時間を確認する。

 

8時50分。「ほんとかよ。」2度見する。段々と時計が憎らしい奴の顔に見えてくる。

 

8時40分にセットしてあったのでそうこうしている間に

 

もうすでに10分という長い年月が過ぎ去ってしまったようだ。

 

全世界が俺を騙そうとして10分という貴重な時間をこの短い間に奪い取ったんじゃないか?

 

おそろしく早く感じる。

 

暇な時の1分とさほど変わらない感覚がする。

 

「よし。起きるか。」

 

これ以上寝てても仕方ない。この当直室のヌシになるつもりは毛頭ない。

 

声に弾みをつけて一気に起き上がるとともに

 

今まで出しゃばっていためざまし時計をグーの音も出ないほど押さえつけてやる。

 

「はっは。ざまあみろ。しとめてやったぜ。」

 

起きるのにここまで苦労するというのも

 

昨夜の当直で全然寝かせてくれなかった現実があったからだ。

 

午後11時までは不気味なほど病院はひっそりとしていて

 

今日はこのまま何もなく翌朝まで落ち着いた感じで過ごせると思っていた。

 

シメシメ。労働なく賃金ゲット。

 

今の俺は当直当番の一人の医師というよりも

 

むしろビジネスホテルに泊まっているサラリーマンとさほど変わりはない。

 

「さあて、風呂でも入るとするか。」

 

と思っていた矢先、浮ついて考えていた甘い考えに天罰が下ることとなる。

 

「先生、急患が入ります。」と言った事務員の言葉がスタートの合図となり

 

まあ、お患者様が来るわ。来るわ。

 

それぞれ親同伴での熱発の子供1・2・3人と時間をおいて来たのが始まりとなり

 

心筋梗塞疑いのおとうさん。交通事故のカップル。

 

脳梗塞疑いのおばあちゃん。

 

挙げ句の果ては線香を誤って誤飲してしまったという赤ちゃんまで。

 

処置したのち、このままほったらかしには出来ない患者については

 

あっちの科、こっちの科と専門の所に連絡して

 

患者を移す手配で目が回りそうなほどの忙しさだったのだ。

 

途中カルテを書いている時にあまりの忙しさに

 

頭が休憩を求めているらしく動きが止まっているのが自覚できた。

 

このまま仕事を放棄してロダンの銅像になれたらどんなにか幸せだろうと思ったほどだ。

 

また御苦労なことに、来てくれた人々がまとめて当院に来てくれるのではなしに

 

まるでタスキリレーでもおそらく俺の隠れた所でしているんじゃないかと思うくらいのペースで

 

終わったら次、終わったら次と間隔を空けることもなくとても有り難く来てくださったのであった。

 

ひと段落つきホッと一息ついたところで腕時計を確認する。

 

もうすでに朝の8時。

 

「うわぉ!!!」おもわず病院の廊下で叫んでいた。

 

気が触れたのか、その場でサンバを踊りたい気分だった。

 

さすがに精神科に直行で連れて行かれそうになるかもしれないので、

 

かろうじてその辺の所は自制した。

 

次の先生に申し送りをしてバトンタッチしてからのわずか40分か50分の間

 

当直室において横になって休ませてもらっていたという状況だったのである。

 

すぐに帰れはしたのだが一睡もしていないこの状況で頑張って帰ろうものなら

 

居眠り運転して大切にしているアストンマーチンごと

 

壁に激突するか高速を逆走してもおかしくない状況だったため

 

少し横にならせてもらってからここを出ようと考えての行動だった。

 

急いで当直室の洗面台で歯を磨く。朝めしは食わない。

 

こんな時に食べ物なんぞ入れようものなら絶対吐いてしまう。

 

ただでさえハブラシが口の奥を微妙に突くだけで吐きそうなのに。

 

それに体が鉛のように重たい。

 

さきほど休む前の体に10KG分の荷物を背負わされているんじゃないかと思うほど

 

体が言うことを聞かない状態となっている。

 

こんなことなら休まず起きていたほうがまだ良かったな・・・

 

と思ってしまう。

 

いそいでデニムに履き替えカ―キのフライトジャケットに着替える。

 

ふう~。ようやく本来の自分に戻れる。

 

「よしパチンコ行くぞ。」

 

(帰って寝るぞ。)てっきりそう思った人がいるかもしれない。

 

俺はそんな軟(やわ)な奴ではない。

 

日中に寝るなんてことをしたら

 

この先の俺の余命というものが体を動かすことなく過ごしてきたんだよと

 

無駄にしてしまったような感覚にとらわれ、つまんない人生を送ってしまったと錯覚するからだ。

 

かといって大切な余命をパチンコに使ってしまうのが楽しい人生なのかと思われるかもしれない。

 

余命、余命と言っているが俺はまだ若いし・・・まあこれも若気の至りなのである。

 

 

つづく

 

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