2019年07月31日

母と娘

「私にはもったいないくらい出来た娘だったのよ。」

 

涙ながらにそう話すのは、昨夜大切に育ててきた一人娘が旅立ってしまい

 

悲嘆にくれながらも努めて明るく振る舞おうとする母親の姿。

 

今夜一緒に過ごすことになる娘との最期の夜が

 

さらに漆黒さを増し母親の周りを静かに包みこんでいる。

 

死というものは必ず誰でもこの先訪れるものだが

 

親子の順番をひっくり返してまで

 

無念さを感じるものはない。

 

「舌癌」

 

ドクターから告知されたのはかれこれ2年前の出来ごとになる。

 

はちきれんばかりのやるせなさが

 

か弱い2人を襲ってきたが

 

それでもしっかりと明日を見つめ

 

母子ともに力を合わせてここまでやってきた。

 

娘は少しでも母の手を煩わせぬようにと

 

自分で出来ることは極力自分でやったし

 

母は母で娘の前では何があろうとも

 

明るくみせることに専念した。

 

「私の命と引き換えにこの子を救ってくださるのなら

 

私なんてどうなったってよかった。」

 

もしこれができたのならこの母親は

 

命を本当に捨てたであろう。

 

歪んだ親子関係がもつれて

 

互いに傷つけあい

 

事件にまで発展してしまった報道が世間を騒がす中

 

本当の親子の絆というものは捨て身になってでも

 

我が子を守るという強い母親の姿

 

これが真の姿なのかもしれない。

 

涙にあけくれ嫌というほど娘の前に立ちはだかった病魔に

 

何度この親子は一緒になって立ち向かってきたことか。

 

棺を一点に見つめる真っ赤に充血した彼女の瞳が

 

その歴史をうかがわせる。

 

「少しお休みになられてはいかがですか?

 

明日色々しなくてはいけないこともあるし

 

休んでおかないと自分の身体がもたなくなります。」

 

「いいの・・・それでも」

 

明日になれば荼毘にふされて

 

長年連れ添ってきた娘という輪郭さえも

 

なくなってしまうのだ。

 

そうだった・・・

 

言ってみた手前

 

2人の隙間を開けてしまっているのではないかという

 

感覚に陥り自分の愚かさに胸が締め付けられた。

 

このままそっとしておいてあげよう。

 

今夜一晩は親子水入らずにしてあげることが

 

何よりの得策であることは確かだ。

 

今さっきまで通夜式という喧騒の中に

 

いきなり喪主という極めて重要なポジションにポツンと置かれ

 

親類たちの同情に波調を合わせつつ

 

気遅れせぬようにと頑張ってきたのだから。

 

この場はこのまま

 

暗くて果てしなく長い時の中に

 

母親の気が済むまで

 

その身を任せておいたほうがいい。

 

やがてロウソクの火が消えてなくなるように

 

夜のとばりが静かに下りたのだった。

 

 

 

 

 

あれからというもの

 

かなりの月日が経ってしまっていた。

 

母親は元気で今も暮らせているだろうか?

 

ほんと運命というのはどこで何が狂い始めるのかわからない

 

彼女はこの世に対してなにをしでかし

 

業を重ねた訳でもないのに。

 

突如、神がお与えになった試練の一つ。

 

その試練が通り過ぎていってしまうような

 

軽いものだったら何の問題もない。

 

彼女の人生を狂わし

 

これによって歯車の噛み合わせが狂い始めているとしたら・・・

 

でもそうなったとしてもただジッと

 

それを受け入れて前を向いて歩いて行くしかないのだ。

 

たったひとりで。

 

南安 城一郎

 

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